〇叶えたい夢があるから-Green ページ18
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午前8時30分、天気はやや曇り。
「ふぅ……」
「受験会場」っていかつい看板立ってる建物の前で
御守りを握りしめたら最後の願をかける。
この1年間、勉強も音楽も本気でやってきた。
それは全部、今この瞬間のためであって、
こっから先の未来のためであって。
「……うまく、いきますように」
そうお祈りしたら
少しだけ震えてる手でスマホを見た。
昨日の夜、Aちゃんにパワーもらいたくて
『明日、受験頑張る』って送ってから寝たら
朝になって、Aちゃんから返信が来てて、
Aちゃん晶哉へ
受験当日だね。あまり色々言っても緊張するかも知れないけれど、
晶哉がこの1年間頑張ってるのを見てきて、
努力する晶哉は本当にカッコよく見えました。
晶哉なら絶対大丈夫。
テストも面接も演奏も、今までやってきたことが全部出し切れるように願ってます。
晶哉の夢が、叶いますように。
俺の夢。
Aちゃんとおんなじ大学に行く。
一緒に演劇をやる。
そうやんな、まだプロローグみたいなもんや。
こっからがきっと、ほんまのスタートで。
「……待っててな、Aちゃん」
大好きな笑った顔思い浮かべたら、
いつの間にか手の震えは収まってた。
「……よし、行こ」
夢を叶えるための最初の舞台に。
・
―はい、それでは時間となりました。
受験生の皆さんは筆記用具を置いてください。……―
名前書き忘れてへんかもっかい確認してから答案用紙をひっくり返したら
達成感と開放感で身体がふわっと浮いた気がした。
―それでは皆さん、忘れ物がないように退室ください。
お疲れ様でした―
教室を出て行く人らに混じってふわふわした気分で小講堂を出たら、
曇りやった天気はまっさらな青空に変わってて、
「終わったんよな……」
何でやろう。
めっちゃ嬉しいはずなのに、泣きたくなるんは。
きっとAちゃんなら、
こんな気持ちにつける名前も知ってるんやろうな。
あぁ、会いたいなぁ。
今すぐAちゃんに抱きつきたい。
電話かけようかな、ってスマホの再起動待ってる間、
ふっと待ち受けに映った自分の顔を見て、
やっぱり電話するんはやめた。
次に会う時は、1番カッコえぇ自分でって決めたから。
ほっぺたむにむにして泣きべそ顔にばいばいしたら
風に吹かれたいちょうの葉っぱが降ってきて。
「頑張ったな」って褒めてくれたんかな？
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作者名：マリア | 作成日時：2023年12月1日 22時
