〇Slapstick Drama(後編)-Orange ページ24
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酒「久しぶりやな、結城」
馴れ馴れしく声をかけてくるソイツの名前には聞き覚えがあった。
酒寄。
去年演劇部にちょっとだけおって
新入生公演をめちゃくちゃにしかけた、
ユキさんをボロボロにしたヤツや。
結「どうして、」
背中の後ろから聞こえるユキさんの声が硬い。
酒「どうしてって、俺らも参加してんねんで？
ほら、『最先端お笑い研究所』って
これ俺らが新しく立ち上げたサークル。
去年の学祭公演で大赤字出しもうてなぁ、
前のサークルは解散せなあかんかったんや」
「ほんま、誰かさんらのせいやわ」って
回りくどい悪口と、分かりやすい侮蔑の眼差し。
あかん、思うてた100倍コイツ嫌いや。
酒「ま、色々あったけど今はここで活躍してるから
これ、ライブのチケット。
学祭で公演するから観に来てな」
ユキさんに向けて差し出された紙切れを
震える指先が受けとる。
ちらっと覗いたら
小学生の落書きの方がまだうまいくらいへったくそなイラストと
スケジュールが書いてあって。
でもその時間は、
結「……ごめん。
この時間は本番があるから、行けない、」
酒「は？別にえぇやん。
どーせ脚本なんか本番中は関係ないんやし」
「……は？」
コイツ、今なんて言った？
「脚本なんか」って言うたん？
お前、曲がりなりにも演劇部おったんとちゃうんか？
グツグツ沸いてくる怒りを握りしめる。
コイツ、何も分かってへん。
ほんまに、
「……演劇、舐めんなよ」
酒「はぁ？ってかお前誰やねん、女装家は黙っとけや」
「黙るんはそっちやろ！
脚本なんか関係ない？はぁ？
アンタ、全っ然演劇分かってないやん。
役者ばっかが目立って見えるかも知れへんけどな、
脚本や演出や裏方や照明や音響がおって
全員が同じ熱量でぶつからんとお客さん感動させられへんねん。
全員で同じ景色見て、それを共有して、
お互いの熱量を高め合ってくから、どんどんえぇ舞台になんねん。
脚本は、その熱量の根っこや。
みんなが胸張れる話を創るプレッシャーと恐怖を
アンタは知らへんやろ？
やからそんなこと言えんねん。
お前はビビりの臆病者で根性なしのドクズや、
そんなヤツが演劇語んな、
ユキさんに触んな！！」
勢い任せに啖呵切ったら
酒寄は血管ブチぎれそうなくらい顔真っ赤にして、
酒「この、クソ野郎ッ！！」
「ッ、！」
結「やめて酒寄君っ！」
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作者名：マリア | 作成日時：2023年11月4日 1時
