★〇うらみっこなしのライバル-Green ページ16
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「あかんあかん、遅刻する！」
最寄り駅の改札出て
お帰りの皆さんと逆走しながら日が傾いてきた道を走る。
佐野晶哉、17歳。
ただいま、大ピンチです！
「先生、今日は早くって言うてたのにぃ！」
あの先生、調子出したらめっちゃ話長なるから
今日だけは止めてな？って釘刺してたのに
いつもの倍話してたやん！
なんでよ！
「今何時！？うわ、5分前！」
もう飛び込みやんな、こうなったら。
あぁもう！
Aちゃんおったら話したかったのに！
こうなったらしゃあないから
せめて開演に間に合うように
迷子にならんとまっすぐホール棟に走った。
なっがい階段1段飛ばしで登って
ようやく駆け込んだら、
ほら、もう誰もおらへん！
「だれかぁ……、勝手にはいってえぇの……？」
息ゼェハァしながら
陸上走り終わった選手ばりにウロウロしてたら、
ガチャ、
―あれ、もう誰もおらへんと思ったのに―
のんびり出てきたお兄さんが不思議そうに見てくる。
あれ、このお兄さんどっかで見たことある、
けど、あかん。
酸素足りひん。
―観劇されます？―
「はいぃ……」
―えっ、大丈夫？―
「僕のことは、お気になさらず……。パンフレットください……」
―あ、はいはい。気ぃつけて―
「ありがとぉございます……」
パンフレット受け取って会場に入る。
うわ、けっこう埋まってんな。
関係ないけどちょっと嬉しく思いながら
お姉さん達の間を失礼して真ん中寄りの席に座った。
パンフレットとか読む暇もなく
会場が暗転する。
まぁ、ともかく間に合ってよかった。
大晴くん、Aちゃん、
楽しみにしてんで。
・
―楽しかったねぇ、―
―ナオヤ役の子、カッコよくなかった？―
―えー、うちキセキくんや―
前を歩く女の子達のおしゃべりを聞きながら階段を登る。
キセキくんは大晴くんの役名やんな、
確かにカッコよかったもんなぁ。
ま、Aちゃんが作ったから当たり前やけど。
俺に書いてくれたら多分、超絶イケメンに……
いや、多分犬かなんかになるな。ゴールデンレトリバーとか。
わんって。
そんなん思いながら会場を出たら、
―ありがとうございましたぁ、あ、君さっきの―
「あ、さっきはどうも」
受付してくれたお兄さんが
俺を見っけて愛想よく笑った。
―大丈夫やったん？―
「えぇ、なんとか劇には集中できました」
―そんならよかった(笑)―
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月22日 2時
