〇幸福は溢れるように-Yellow ページ6
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待ち合わせの駅に、いつも通りのおだんご頭。
「リチャ君、」
リ「おん、」
イヤホンをあまりしないリチャ君は
声をかけたらすぐ振り返ってくれる。
そういうところが、実は好きだったりする。
「はい、これお土産」
リ「なんの」
「夏旅行の」
リ「おー。パンダや」
「かわいいでしょ？」
もっちもちのパンダのキーホルダーをぶら下げて
リチャ君が笑う。
リ「かわえぇな」
「ちなみにお揃いだったりして」
おんなじもっちもちパンダをさげたバッグを見せたら、
「おぉ、」って薄めのリアクション。
「嫌だった？」
リ「いや。……そう言えばお揃いとか初めてやなと思って」
「だってそういう柄じゃないじゃん、私もリチャ君も」
リ「ま、そうやな」
特にそれ以上何を言う訳でもなく、
だけどパンダのキーホルダーは
ちゃんとバッグにつけてくれる。
案外かわいいもの好きだもんね、計算通り。
リ「ほな、行こか」
大学の最寄り駅だと顔見知りに見つかるかもしれないからって
わざと乗換駅で待ち合わせした
照れ屋なリチャ君の横に並んで歩く。
昼過ぎなのに駅は人が多くて、
中にはちらほら浴衣姿の人もいて。
「もしかして、ご一緒かな」
リ「かも知れへんな」
「ホテル取れてよかったよね」
リ「早めに取ったからな」
地元の土地勘を頼ってリチャ君にホテルをお願いしたら、
後日送られてきたのは
旅館風の綺麗なホテルのURL。
意外だなぁなんて思いながらその事を話したら
『……まぁ、たまにはな』ってもぞもぞ言ってたけど、
正直なところ、
一緒の部屋ってだけでもう十分嬉しい。
リ「そういや、インターンどうやった？」
「可もなく不可もなく。
社会経験は得たって感じ」
リ「それは、お疲れ様」
「本当。大学生っていいなって改めて思うよね」
リ「やりたいことできるから楽しいもんな」
「はぁ、大人になりたくないなぁ」
リ「こればっかりはしゃーないやろ」
この間のインターンの面白みのない3日間を思い出したら
ついため息が出ちゃって、
リチャ君の眉が器用に動く。
リ「……京都ついたら、甘いもんでも食べる？
ここの抹茶のロールケーキ、美味かったで」
「え、本当？」
「ほら、」って見せてくれたスマホの画面には
確かに美味しそうなロールケーキが写ってて、
「美味しそう、行きたいなぁ」
リ「了解」
上手にご機嫌を取ってくれるリチャ君に
また、まんまと乗せられた。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月12日 22時
