キミ、カオル。I【すとぷり】

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side…なーくん

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彼シャツと言う事態を招いた事の発端は菊地さんからのLINEだった。


ダンボールに詰まった服を嬉しそうに眺めるAをメンバーで微笑ましく見守っていた時。



菊地 部屋着、入れ忘れてました。
誰かTシャツ貸してあげてください。



と、グループに送られてきた。


メンバー全員、菊地さんがそんな凡ミスをするなんてありえないと分かっている。


わざと入れ忘れて俺らを弄んでいると誰もが分かった。


「……あれ？部屋着どうしよう」


と呟いたAに全員綺麗にハモってが「貸すよ？」と返答した。


そんなこんなでAがお風呂に入っている最中、仁義なきじゃんけん大会が行われた。


俺は見事優勝しAの初彼シャツ権を獲得した。


だが、すぐ仕事の電話がかかってきてしまい、席を外して戻ってきた時にはみんな部屋に戻った後で今の今まですっかり忘れていた。



━━━━━平常心。平常心。



そう自分に言い聞かせてAに近づく。


「朝だよ…… お姫様(プリンセス)」


また、無意識にAの頬に手を伸ばしていた。





次の瞬間、キミは、俺の手に顔を寄せて


「なーくん……」


と呟いた。




猫のようにすりすりと俺の手を頬で撫でるキミ。



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時が。

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鼓動が。

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呼吸が。

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思考回路が。

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ピタッと止まる。



「A？」


ゆっくりゆっくり目を開いていくキミ。


「んっ……」


眩しい朝日に少し目を細めている。


「おはよう、A」


キミは少し嬉しそうふわっと笑った。


「じゃあ、俺起こしに来ただけだから、下で待ってるね」


そう言い残し俺は早足で部屋を出て階段を降りる。


リビングまで行ったところで俺は発病(・・)した。

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止まっていた時が動いて。


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鼓動がものすごい速さで脈を打つ。


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呼吸が上手く出来なくて。


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頭はキミの顔を何度でもフラッシュバックする。


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顔に熱が広がる。


俺だってこれが何かぐらい分かる。


だけど、頭は受け入れるのを拒否する。


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俺は気付かないふりをする。




━━━━━━━━━━この想いの名前に。


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