企画【設定集-2】

├半生7 ページ45

「お前は甘やかされてばっかだから、そうやって基礎も疎かにするんだな」


そう言って、ガラス瓶に伸ばされかけたひとまわり小さい手を勢いよく掴んだ


……はずの俺の手は空を切って、代わりに、ガラス瓶が壁に叩きつけられる派手な音が響いた。



◆



飛び散った破片で手が傷ついて、ボタボタ血が溢れるのも気にしない……いや、気にする余裕すらない様子で、フィーナは呆然とする俺を睨みつけた。



＿＿甘やかされてばかり？女の子は傷を作るな？ふざけるな、口出しするな！ いつも、いつもいつも貴方の事情にいちいち付き合わされる！！いつも腹が立って仕方がないのを全部我慢して、ヘラヘラ笑って流してやってるのに！！

＿＿父親も誰も彼も、私のことを貴方のおまけ程度にしか見ていない。貴方を引き立てる役、貴方に都合の悪いような役は全部片割れの私に押しつけられる！
そのくせ貴方は何も知らないで上から目線でふんぞり返って……あぁ、もううんざり、うんざりだ！ こんなやつと同じ腹の中にいたと思うだけでゾッとする！

＿＿どうしていつも貴方が優先されるの？ どうしてそうやって、上から目線で嫌な部分にズカズカ踏み込んでこれるの！ あぁそう、貴方の方が才能があって、親に贔屓されて、自分の好きな絵が描けるからか！一緒に生まれたのにどうして私だけがいつも我慢しなくちゃいけないの！！



そう叫びながら胸ぐらを掴む力は、いつもより格段に強かった。というか10代前半の女子が出せる力じゃない。


なんでか、はすぐにわかった。アイツの魔法だ。一時的に強弱関係を、どうしても詰められない力量の差を、一瞬にしてひっくり返してしまう魔法。
皮肉にもこの場面で、頭に血が上ったフィーナが発動させてしまったみたいだった。


アイツはまるで何かの糸が切れたみたいに、今まで散々引き摺り回されて、俺に付き合わされたことへの不満を吐き出した。どうしようもなく俺にイラついてニードルを片手間にデッサンしてたことも、俺に付き纏われない夜に絵を練習していたことも、そのせいで寝不足になっているのに、昼間は俺のかわりに応対をさせられることも。

├→←├半生6

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す