企画【設定集-2】

├半生5 ページ43

◆


俺の絵を見る人が増えるたび父さんは厳しくなる。
人に見られながら描くのは父さんに見られてるみたいで息苦しかったけど、俺は精一杯頑張って上手くなった。だけど俺が上手くなれば、また絵を囲う人は増えて父さんの指導はどんどん感情的に、過激になってく。父さんが俺を叩く力は、それに比例するみたいに強くなっていった。


傷が増えたら増えたで、兄さんや姉さんは「よかったね、お前は父さんに贔屓してもらえて」と嫌味を吐き捨てていく。あー、割と家族ってどこもこんな感じ？ みんな絵と、才能と、レッテルしか見ないから、俺が辛いなーって時に支えてくれる人はいないんだ。
昔、俺が父さんにしたみたいに、俺にそうしてくれる人は誰も＿＿＿


……しんどいからちょっと休みたいなって、それすら、周囲の評価が許してくれない。そもそもずっと突っ走ってきたようなもんだから、休み方もよくわからないけど。


どうしてこうなったんだろう。
仮に俺が泣き出したら助けてくれる人っているのかなとか、ふと考える時があった。まあフィーナだったら許されるんだろうな、アイツはカワイイ末っ子だし、俺と違って愛想が良いし、何より女の子だから。きっと父さんに打たれることも、上の兄弟に冷たいことを言われることもない。


だから余計フィーナの姿が自由に見えるのが、羨ましくて仕方なかった。俺がこうやって圧迫されてるうちにも、アイツは人並みに甘やかされて、自分の好きな絵を気ままに描けているに違いない。一緒に生まれたのにどうしてアイツだけが？


「クライヴはすごいね、何したらそんなに上手くなれるの？」って苦笑いしながら言う姿に度々腹立たしさを覚えることもあったけれど、それでも俺が愚痴ってちょっとでも弱気になれる相手はへらっとした片割れしかいなかった。


だから、一緒にいようと思ってたのに。



◆



それは、心配の意図を含んだ言葉が、俺にしては珍しくすんなりと出てきた時のこと。
いつもは喉で引っかかっていたんだけど、イーゼルの前に座ってピアスを開けまくる妹の姿がかなり衝撃的だったもんで。


「何してんだよ、やめろってそんなの！痛いだろ！」
片手にニードルを持って、もう片方の手の甲からだらりと血を流す妹を見て、思いがけず声が大きくなった。駆け寄って、肩を掴んだ。

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