企画【設定集-2】

├半生1 ページ39

【半生】



昔、ほんとに小さい頃。たくさんの作品が置いてある部屋で、ぽつんと1人でいる父さんを見つけた。


記憶の中ではちょっと近寄りがたいけど堂々としている父さんだったのに、その時だけはやけに小さく見えて「どうしたの？」って声をかけたんだ。

そのとき初めて、父さんの背中に隠されてたバラバラの作品を見つけた。父さんがたくさんの年月をかけてやっと作り上げた作品を、展覧会で「こんなもの、この国には必要ない」って言われて、貴族達に壊されちゃったんだって。
その時に飛び散った破片が運悪く父さんの左目を傷つけて、左の視力は著しく落ちてしまったらしい。


権力のせいで芸術が虐げられることなんて、あっちゃいけない。父さんはそう言いながらずっと頑張ってたのに、それがショックでずっと忘れられないんだって。描きたかった絵も、ココロがぽっきり折れて描けなくなってしまった。

作るのにかける時間はたくさん、努力する時間はたくさん、でも人のココロもプライドも作品も壊されるのは一瞬で済む。そんなこともわからないような、あるいは知ってても嘲笑うだけの奴らのせいで、父さんはとても辛そうな顔をしていた。


どうして？父さんはずっとがんばってきた、すごい人なのに。作る側の気持ちも知らないで心ないことをするやつらが不幸になればいい、偉そうにふんぞり返りながらそんなことする奴らが不幸な顔になればいいのに＿＿＿そう思いながら、おれは父さんに言ったんだ。


「じゃあね、おれがそういう奴らを見返してあげる。父さんはがんばってるんだから、ちょっと休んだっていいよ、おれががんばるから」


「そう、そうか。お前も頑張ってくれるのか、クライヴ。お前は私に似ているなあ。
……じゃあお前には、いろいろ教えようかな」







◆

父さんはおれに絵を教えてくれる。仕事の合間に、度々俺のいる作業場に顔を出しては厳しいアドバイスをくれた。


もちろん、そこにはフィーナもいたけど、あいつは絵を描いたり色んなものを観察するのに夢中で、父さんは「邪魔しちゃいけないな」と苦笑いを浮かべていた。
……父さんのこういうところは、ちょっとムカッとする。俺には「やる気あるのか？」とか怒る癖に、フィーナには甘いんだもの。

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