人造人間のまどい【Albedo】 ページ5
◇
『結局あんたにゃ敵わないんだろうな、なんて分かりきったこと。』
＊――――――――――＊
He side
ドラゴンスパインは未曾有の地だ。毒龍ドゥリンの亡骸がこの地の地脈と親密に絡みつき、あらゆる変異をもたらしている。呪いと言っても過言ではない血と怨念がたっぷりと染みついたこの地では何が起こっても不思議ではない。
「お？」
「……。」
だからこそこんな、遺跡と思わしき建造物の壁が崩れた先に部屋のような空間があって、そこに人がいるなんて至極あり得ないことも起こりうるわけで。
「いや〜ビックリした！まさかこんな辺境の地に人と、しかも"黄金"レインドットの最高傑作様とお目にかかれるなんて！」
私は運がいいなぁ、と一人ほけほけと笑っている目の前の人物。この空間の薄暗さからか、いまいち性別が分かりにくい彼――便宜上彼と表記する――はさて、と手を合わせて此方を見据えた。
パチンと狭い空間に、この薄暗さと不気味さには到底不似合いな軽い音がこだまする。
「かの御仁の最高傑作様が、こんなガラクタばかりのゴミ溜めに何の御用で？」
「……まずその"最高傑作"という呼び名をやめてもらえるかい？」
「おっとこれは失礼を。」
彼はおどけるように笑うと、どこか芝居がかったように恭しく礼をする。態度からして口に出したことを心にも思ってもいないのは一目瞭然だ。だがわざわざ口に出すことでもないので特に気にせず流す。
……ボクが彼女の最高傑作たり得るかは彼女のみが知ることであって、会って十分も経っていない目の前の不審人物に言われる筋合いはない。
以前なら流していたであろうその呼称も、彼に言われるとなんだか引っかかってしょうがなかった。
「ボクの名前はアルベドだ。」
「アルベド殿ね、覚えましたよ。」
「そうかい、嬉しいよ。」
「思ってもいないクセに、よくもまぁいけしゃあしゃあと……。」
「それはキミも同じだろう？」
「ありゃ、バレてました？」
「随分と前からね。」
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作者名：�柏� | 作成日時：2022年10月21日 15時
