メリーゴーランド【うらたぬき】

二十九周目 ページ30

「…Aさえ良ければ、なんだけど。Aの風邪が治ったら、…遊園地行かない…？」









遊園地。









渉の口から出た、その言葉。









『……ゆう、えんち…………？』









ゆうえんち。ユウエンチ。









…遊園地？？？？？？









「…あ、い、嫌ならいいんだけど、」









慌てた渉の声が、いつもより少し恥ずかしそうで。









…そんなのって、ずるい。









『…ううん、行きたい……』









そう言うのが、精一杯だった。









なんだか頭がふにゃふにゃして、気を抜いたら泣いてしまいそうで。









なんなら、夢じゃないよねって頬をつねりたい気分だった。









「…！！良かった、遊園地なんて久しぶりだな」









ぱあぁ、って効果音が今にも聞こえてきそうなくらい、渉の声は弾んでて。









なんだか昔に戻ったみたいで、私まで嬉しくなった。









『うん、小学生ぶりくらいだね』









あの時は、お互いのお母さんも一緒で、まだ性別を意識する前だったから、純粋に楽しめたけど。









今回は、さすがにそんなこと言っていられない。もう高校生、なんだから。









…私、1日心臓もつんだろうか。

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