メリーゴーランド【うらたぬき】

一周目 ページ2

「Aって3年生の浦田先輩と幼馴染なんでしょ？羨ましいなぁ」



毎度言われる決まり文句。

これを言われたら、私が返す言葉は毎回同じ。



『私は幼馴染であって、女の子じゃないんだよ』



よくある漫画みたいに、幼馴染＝恋愛対象とか、お互いの家を行き来し合うとか、そんなのないもん。

だって相手は、あの渉。



「浦田先輩って、告白されても絶対断るんでしょ？で、断る時のセリフが、」


"俺、恋愛とか興味ないから"


渉の声を真似したらしいけど全然似てなくて、他の女子達が笑う。


────そう。

中学生時代もその一言で可愛い女の子達をかわし続けて。

さすがに高校生になったら彼女作るのかな、って思ってたら、中学の時と全く変わってなかった。



『もったいないよ、折角の高校生活なのに』



私がそう言っても、渉の返事は変わらなくて。

一部の女子達は、"好きな人がいるんじゃないか"と噂している。



「幼馴染なんだから、そこら辺の話聞いたことあるでしょ？」



『…うーん……』



そもそも毎日会う訳でもないのに、そんな会話するはずもない。

別に会うのを避けてる訳じゃないんだけど。


むしろ中学生の時は、それこそ部屋の行き来なんて当たり前だった。

でも、1年早く渉が高校に進学して、それから少し距離ができて。

私が高校1年生になって学校で渉を見ると、中学時代より明らかに取り巻きが増えていた。

そんな状況で近寄りがたくなっちゃうのもしょうがなくて、さすがに高校生にもなって家を行き来するのはまずいかなって思って、あまり会わなくなって。

今年は渉が受験だから、更に顔を見ることも少なくなって…。



「Aは、浦田先輩のこと好きじゃないの？」



好き────好き、か。

これまで私は告白なんてされたこともなかったし、したことももちろんない。

渉のことを、そういう風に考えたことがあるか、ってことだよね？



『…私は、ただの幼馴染だから』



性別を意識する前から知り合いなのに、今更恋愛対象として見るなんて、渉が困る。

────なんて、


そんなの、ただの言い訳なのにね。

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