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「だから、絶対に死なない方がいい。そっちの方がマシ。だって、死んだら誰ともしゃべれなくなっちゃうんだよ。」

「......どういう、ことだ?」

「幽霊っていうのは、透明人間みたいなものなんだよ。誰にも気づかれず、名前も呼ばれない悲しい存在」



その時、Aの表情に影が差したのを独歩は見逃さなかった。
実体験のような彼女の言葉に、独歩の背中は粟立った。
Aは不意に立ち上がり、木の近くまで歩いていって、独歩に背中を向けた。


「人生って辛いよね。高校生だった私でもわかるもん。」

「でもね、私は...今の方が辛いかなぁ」

「......A、お前...まさか」


Aは、独歩の方を少しだけ振り返り、悲しげに笑った。


「ごめんね、私さ...もう死んでるの。」


それは、独歩が初めて見た彼女の笑顔と同じだった。切なさの原因が、彼女の儚さの正体が一気に顕になった。
彼はしばらく目を見開いたまま固まっていたが、頭では恐ろしいほど冷静に過去をふりかえっていた。


「そ、か...あの時間に外に出てるのも、スカートが、汚れたままなのも、そういう事か...」

「死んでからの夜は長いからね。...あの時さー、すっごく嬉しかったし、びっくりしたんだよね。」


独歩のつぶやきを拾い、Aは懐かしむように言った。


「私、死んでから1度も人とお喋りしていなくて...すごく寂しかった。ようやく辛いことから解放されるって思っていたのに、死んでからの方が辛いなんて酷いよね」

「もちろん最初は楽しかったよ!だって何しても怒られないんだもん。道路に寝転がったり、バスに無賃乗車したり、誰かの自撮りに写りこんだり...」

「ふっ...やりたい放題だな」


いつもと変わらないAの様子に絆されたのか、独歩は彼女の言葉に思わず笑って言った。独歩はまだ夢心地であるが、Aが幽霊だという事実は何故か彼の心にしっくりと馴染んでいた。

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(プロフ) - kai_0998さん» 分かりみがフカヒレ (2019年12月8日 11時) (レス) id: c01d9ddcd5 (このIDを非表示/違反報告)
kai_0998(プロフ) - 紺さん» コメントありがとうございます。独歩にはどうしてもメリバエンドを迎えて欲しい気持ちがあります... (2019年12月8日 1時) (レス) id: 8c34b5ee67 (このIDを非表示/違反報告)
kai_0998(プロフ) - 鈴さん» コメントありがとうございます。褒めていただいてとても嬉しいです!楽しく読んでいただけたなら本望です...ありがとうございました (2019年12月8日 1時) (レス) id: 8c34b5ee67 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 独歩おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ (2019年11月30日 12時) (レス) id: c01d9ddcd5 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - すっごい感動しました!この作品を作ってくださってありがとうございます! (2019年11月29日 16時) (レス) id: 6cdcbd2af6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:kai_0998 | 作者ホームページ:http://id52.fm-p.jp/649/kieyuku/  
作成日時:2019年11月28日 22時

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