ハゲでも愛すよ江口パイセン！【完】

スーパー西山タイム ページ5

お互いが出演するアニメや映画の話、最近あった出来事、同世代の面々の近況、エトセトラエトセトラ。
話は尽きることなく，どんどんお酒は進む。
なんだかんだ忙しくて、この3人で集まるのも久しぶりだったせいかいつも以上に時間が過ぎるのが早い。

「俺トイレ行ってくる」
「あー，またタクシー降りた瞬間にお漏らししたら困りますもんね」
「僕ついていきましょうか？」
「ｗｗ西山兄妹ほんっとやだｗｗ」

ひらひらと手を振って江口さんを見送る。
……兄ともども，我ながら舐めた後輩の自覚はある、一応。

「て，もうこんな時間じゃん」

ふと、たろにぃがスマホを見て呟く。それに釣られて腕時計を見ると，既に日付は変わっていて，終電は数十分前に逃してしまっていた。

「ほんとだ。いつの間に」
「えー僕まだ飲みたいなぁ」
「やだよ，酔ったたろにぃ面倒なんだもん」
「今日はそんな酔ってない」
「二次会したら確実にスーパー西山タイムになるじゃん」
「僕あれほんとに記憶にないんだって！」

ちなみに，スーパー西山タイムとは，ひょろっと男子メンバーでの飲み会で我が兄が醜態を晒したタイムのことである。帰り道に「ラーメン食べたい！」と駄々をこねた挙句にすき家に入る，断固としてタクシーに乗らない，5分に1回ポカリタイムと称してディレクターにポカリを飲ませる，サンダルだから足が痛いとサンダルを脱いで「痛くないようにおまじないして」とまた駄々をこねる，等々。……ひょろっと男子でまだまだこの西山スーパータイムでの奇行が紹介されてたけど，我が兄ながら酔い方がはた迷惑すぎる。絶対お世話したくない。

「私スーパー西山タイムの被害者になりたくない」
「大丈夫，Aじゃなくてパイセンにお世話してもらうから♡」

それはもう，ほぼ反射だった。考えるより先に口から言葉が出る。

「っそれはダメ！」
「え」
「あ」

――やば，口滑った。

「え，Aなんでそんな……」
「――A，明日早いんだっけ？」

たろにぃの台詞を遮って，お手洗いから戻ってきた江口さんが私に問う。

「あ，……えと，お昼過ぎまではフリーです」
「ん。宏太朗は？」
「僕は9時から雑誌の取材が入ってますー」
「……んじゃ，宏太朗んちから先にタクシー回って帰るか。はい，ごちそーさまでした」
「「ご馳走様でした」」


律義に3人で手を合わせる。

たろにぃが何か言いたげにこちらを見ていたけど，その視線には気付かないふりをした。

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