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落ちる沈黙と，静止画と思うくらい微動だにしない梅原と，ようやく少し震えが収まった唇と。
流れる時間はきっと数瞬でも，数分と勘違いしてしまうくらいに長く感じた。
「……えーと，梅原？」
とりあえず，ひらひらと顔の前で手を振ってみる。
ようやくぱちぱち，と二度瞬きをした梅原は，まだどこか動きが鈍くて，なんだか早速新鮮な一面を見た気がする。
「は……え，ちょ，待って。いろいろキャパオーバーなんだけど」
「うん。今までごめんね」
「……ほんとに」
「……うん，本音。信じていいよ」
真っ直ぐ見つめて頷くと，梅原の顔が，くしゃりと崩れる。
「触って，いいか」
今まで散々好きなように迫ってきたくせに，何を今更。なんて思うけれど，少しだけ震えているその語尾を聞いてしまったら，なんだか私の目頭も再び熱くなってしまった。
「……いい」
よ，の一文字を言い終える前に，拳3つ分の距離がゼロになる。
首の後ろに回る梅原の腕と，肩に感じるふわふわの髪と，鼻腔を擽る梅原の匂い。
おずおずと私も両腕を背中に回す。2人ともベンチに座ったままだったから少し窮屈だけれど，そんなことはどうでもよかった。
「……まじ，お前，不意打ち過ぎ」
「梅原に言われたくないなあ」
「折角人が今日は紳士的な振る舞いしようとしてんのに，煽ってくるし」
「何それ」
「……服とか髪とか，それこそ靴もだけど……仕事終わり以外で会うことねーし，んな格好で来るの想定外」
「気に入らなかった？一応，梅原にいつもと違うなって思ってほしくて選んだんだけど」
「……死ぬほどかわいい」
「かっ」
ぽんぽんと軽口を叩きあって少し余裕が出てきたところにとんでもない爆弾が落とされて思わず肩が大げさに跳ねる。いや，作戦大成功と言えば大成功なのだけれど。
「でも，そういう格好は俺の前だけにして。」
「……ま，また言ってる」
「お前，俺が何年越しにやっと報われたか知らねーだろ」
「え」
言われた意味が分からなくて，顔を上げようとすると，私の耳元の髪をかき上げた梅原が，そのまま唇を耳孔に寄せた。
「――Aが好きだ」
低くて，それなのにとろとろのはちみつの様に甘い甘い声が，耳からするりと入り込んで脳内を犯す。心臓が破裂しそうになって，防衛本能で彼から離れようとしても，触れ合う体温から逃れられる様子はない。
「逃げんな」
「……っ，ゃ」
私を咎めるように囁きがまた追いかけてくる。その低く甘い声が，唇が，耳元に触れた。
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皐月(プロフ) - kanさん» 梅ちゃん初めてで，デレをどういう風にするか迷ったのですが自分の好みに忠実に甘々で描かせていただきました笑 更新もある程度のスパンで投稿できるよう頑張ります💪お読みくださりありがとうございました！ (2022年4月19日 23時) (
レス) id: 89f7f3e095 (このIDを非表示/違反報告)
皐月(プロフ) - ゆるめさん» あの顔であの声であの性格でそんな甘えられたら何でも言うこと聞いちゃいますよね(？)ありがとうございます☺️しばらくは短編をぽつぽつあげる感じになるとは思いますが，ゆるくお楽しみいただければ幸いです☺️ (2022年4月19日 23時) (レス) id: 89f7f3e095 (このIDを非表示/違反報告)
皐月(プロフ) - 砂糖醤油キャベツさん» 二度目のコメントありがとうございます(^^)拗ね梅ちゃんの破壊力すごそうですよね~~ (2022年4月19日 23時) (レス) id: 9efd3c4f11 (このIDを非表示/違反報告)
kan - しゅきです…（死） 甘ったるすぎて元気が湧いてくる() 学生さんなんですね…！更新も、勉強もがんばって下さい！！！ (2022年4月18日 21時) (レス) @page49 id: 722b421661 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるめ(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！梅ちゃんがしょぼんってしながら｢痛かった｣とか言うの可愛すぎます！！！！！無理のないよう頑張ってください！次の作品も楽しみにしています👌🏻💙 (2022年4月17日 8時) (レス) @page49 id: aa2e2f3b40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：皐月 | 作成日時：2021年5月11日 21時
