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「……A」
「っ！」
梅原に名前を呼ばれ，一瞬で我に返る。
ぱっと裾を掴んでいた手を離したものの，梅原の視線からは逃げられなくて。
「……今なんて」
「何も」
「嘘つけ」
「言ってないもん」
「じゃあさっきまでの手は何だよ」
「あれは，だって――……手が勝手に」
自分でも今の行動の意味が分からないのだから，理由を聞かれても困る。
正直にそう言うと，梅原ははあっとため息をついた。
「……またそうやって煽る……」
「え？何」
「何でもねぇよ。……とりあえず，俺のことが嫌で避けてたんじゃないってことでいいんだな」
「……う，うん」
呟くと，ぴし，と頭に軽くデコピンされた。痛い。
「いや痛いんだけど」
「うるせぇ」
「理不尽！」
「はは」
額を抑えて梅原を睨むと，そこには意地悪い顔で笑う――いつもの梅原がいて。
――よかった，これでもういつも通りだ。
「あ，じゃあさ。今度，今日ランチで行ったとこまた皆で行こうよ」
「……いいけど，何で？」
「え？だって，自分だけ仲間外れみたいにされたのがムカついたんでしょ？」
「……は？」
「いやあでもさ，ちょっと気まずいのはしょうがないじゃん？梅原だって，彼女でもない女友達とどうこう噂流れたり微妙な空気になるのめんどいでしょ？」
「…………」
きっと，梅原も困っていたんだろう。
ただの女友達の酔っぱらいの介抱をしただけなのに，加害者よろしく避けられて，挙句の果てに仲間外れにされて。うん，確かに私もちょっと過剰に反応しすぎたかもしれない。所詮梅原なのに。
「ま，お互い犬に噛まれたと思って，あの日のことはもうこれで水に流そ！」
「…………ほー……」
「あ。ちなみにね，ランチはオムライスだったんだけど，オムライス以上にデザートが美味しくて」
「うるせぇこの激ニブ野郎」
「は？」
「……もういい，俺もう行く」
「はいはい」
「――それから」
「？なに……」
気付くと視界が暗くて，生温かい空気を感じた瞬間，唇が柔らかい何かに塞がれる。刹那，周りの音が全部どこか遠くにいってしまって，時が止まった感覚に陥った。
「俺，お前のこと好きだから。覚えとけ」
え。
「あんま隙見せんな」
状況が把握できないまま，梅原はいつもの表情のまま休憩室の扉を開けて出ていく。
少しして，「あ，梅ちゃん！もう始まるよー」なんて，気の抜けた西山の声が扉の向こうから響いた。
――私はただ，扉をぽかんと眺めることしかできなかった。
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皐月(プロフ) - kanさん» 梅ちゃん初めてで，デレをどういう風にするか迷ったのですが自分の好みに忠実に甘々で描かせていただきました笑 更新もある程度のスパンで投稿できるよう頑張ります💪お読みくださりありがとうございました！ (2022年4月19日 23時) (
レス) id: 89f7f3e095 (このIDを非表示/違反報告)
皐月(プロフ) - ゆるめさん» あの顔であの声であの性格でそんな甘えられたら何でも言うこと聞いちゃいますよね(？)ありがとうございます☺️しばらくは短編をぽつぽつあげる感じになるとは思いますが，ゆるくお楽しみいただければ幸いです☺️ (2022年4月19日 23時) (レス) id: 89f7f3e095 (このIDを非表示/違反報告)
皐月(プロフ) - 砂糖醤油キャベツさん» 二度目のコメントありがとうございます(^^)拗ね梅ちゃんの破壊力すごそうですよね~~ (2022年4月19日 23時) (レス) id: 9efd3c4f11 (このIDを非表示/違反報告)
kan - しゅきです…（死） 甘ったるすぎて元気が湧いてくる() 学生さんなんですね…！更新も、勉強もがんばって下さい！！！ (2022年4月18日 21時) (レス) @page49 id: 722b421661 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるめ(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！梅ちゃんがしょぼんってしながら｢痛かった｣とか言うの可愛すぎます！！！！！無理のないよう頑張ってください！次の作品も楽しみにしています👌🏻💙 (2022年4月17日 8時) (レス) @page49 id: aa2e2f3b40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：皐月 | 作成日時：2021年5月11日 21時
