僕たちは付き合っている (ページ9)

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「おはよう」

「おはようございます」

「あのさ、金曜日、私何かしたかな？」

千賀くんは一瞬目を丸くして、それから困ったように笑った。

「あ～、覚えてないんですね？」

「えっ、やっぱり何かした…？」

「そうですね、あんなこととかこんなこととか言ってましたよ」

「マジか、本当ごめんなさい」

私がそういうと千賀くんは嘘です、と柔らかく笑って言った。

「いつも通りおちゃめなだけでしたよ」

「それってどういう意味？」

「言葉の通りですけど…？」

彼は嘘を言わない。分かっていたけれど、聞かずにはいられないのは私のわがままか、彼を試したかったからか。どちらにせよ、私は自分の保身しか考えられなくて。

「褒められてるように思えないな～」

「褒めてますよ！いつも可愛いなって思ってます」

可愛い、か。さんざん言われて、もう言われ慣れた。少し背が低いだけで可愛いと言われて、それが嫌でバリバリ仕事して “かっこいい女性”を演じてる。私は“可愛い”という誉め言葉が嫌いだ。

「ありがとうね」

私は今、上手く笑えているだろうか。

ただ一人にだけ言われる“可愛い”の言葉は、たとえこの身が滅びようとも忘れないくらいに嬉しかったのに。

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