3*S ページ3
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「おはようございま〜す」
「おはようAちゃん。今日の外回り、朝礼前に出ていっちゃうよね？今ちょっと時間いいかな？」
「はい、大丈夫です」
あ〜、また北山さんのとこだ。Aさん、嫌そうな顔出てるよ。付き合ってたんだよね、あの二人。俺が入社する頃に別れたみたいだけど。北山さんも若くして課長、天性の人たらし、童顔イケメンなんて贅沢な肩書きいっぱいぶら下げてたらそらモテるわな。ま、Aさんが誰の元カノだろうと、今は俺が一番Aさんのこと好きな自信あるし。俺の知らないAさんを知ってるってとこだけ嫉妬するけど。
あれこれ考えながら昨日のうちに作っておいた資料と外回り用の菓子折りを持ち出せるように準備する。
「千賀くんごめん、課長との打ち合わせもう少しかかりそうだから先に社用車乗っててもらっていい？」
「でもそろそろ時間が…」
「すぐに行くから。ね？」
「…分かりました」
必要な荷物を全て持って社用車へ向かう。やっぱりあの二人が話してるとなんかもやもやするんだよな。俺には見えない何かがそこにはあるから。
たとえ仕事の打ち合わせだろうと、二人が何を話してるかなんて考えたくない。目を見れば分かる。お互いぎこちなくて、ぎくしゃくした感じ。言葉にしなくても伝わってくる俺の知らない時間。
考えたら空しくなったから、乗り込んだ車のドアの音で思考を遮断する。
今日は昼飯どこ連れてってくれるかな〜。
「ごめん！遅くなったね」
「本当ですよ。遅れたらどうするんですか」
「怒った？」
「課長との打ち合わせだから仕方ないです。早く行きますよ。シートベルトしてください」
「どっちが上だか…」
先に乗っててって言いに来たときとは違う顔。俺に見せるために作った、『先輩』としての顔。いつか、どんな顔でも全部見せてくれる日が来たらいいのに。俺はどんなAさんでも好きだから。
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作者名：わ！ | 作者ホームページ：http://twitter.com/mi2_lxxx
作成日時：2019年10月28日 13時
