団長と兎.3

109. ページ21

阿伏兎「……はっ……オッサンにはちょいと全力疾走はキツイぜ……団長も少しくらい待ってくれたって良いのによぉ……」

神威「……」

あとから遅れてやって来てブツブツ文句をいう阿伏兎に、何も言えずにいる俺。
それよりももう、話す気力どころか呼吸をする事さえ面倒くさい。


……彼女が居ない世界なんて、まっぴらごめんだ。



阿伏兎「……団長……この血は……まさか」

神威「…………Aは死んだ」

阿伏兎「………は、」

神威「………………もう、帰ろうか」

―――それなら、もう忘れてしまおう。

彼女と笑った日も、泣いた日も、愛し合った日も、全部。
そうでないと、俺が俺でなくなってしまいそうだ。
綺麗さっぱりわすれてしまえば、きっと、きっと……

神威「……っ……ぅ」

阿伏兎「………！！」


嗚呼。
母さんの前でも、泣いたことなんてなかったのに。



神威「…っ…」

阿伏兎「……団長……っ」

神威「……なんでもないよ。」

無理やり涙を拭き取って、大きく息を吸った。
……さようなら、A。

―――――――――――――――――――――――
Aside

A「……ん」

水月「……おはよう、A」

A「おはよう、水月」

兄の戦艦内に、しばらく滞在する事になった私。
思ったよりも体力やけがの具合が悪く、回復に時間がかかるためだ。
まァ、第七師団との連絡手段もないし、正直色々大変なのはこれからなのだが。

水月「水月？……おかしいな。この前は確かにお兄ちゃんと呼んでくれたのに……」

A「……？」

110.→←108.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す