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「A？どした？」
あっ、またぼんやりしちゃってる。
私の頭撫でながら
ほんと、Aっていっつも緩いよなあって笑ってるのは最近付き合うようになった人。
この、人気俳優の高橋健人には奥さんと子供さんもいる。
そんな事何にも気にも止めてない様子で私の事をしつこいくらい口説いて来てた。
ヒロミツと別れてからはガムシャラに仕事して
彼氏なんていらなかった。
一瞬でもヒロミツ以外の人に救いを求めた私はほんとにおかしかった。
私の事救えるのはヒロミツしかいないって、そんな当たり前の事も判断が付かなくなってたんだから。
きっと私はヒロミツ以上に好きになる人なんてこの先現れないんだ。
あの４年前、短い期間だったけど一生分の恋をしたの。
それでいいって思ってたのに。
優しい目で見つめてくる健人を見ながら
この人と付き合ってしまってるのはなんでだろ？って考える。
笑ってる顔が少しヒロミツに似てるから？
それは理由になるかな？
どの道、ヒロミツ以上の人がいないのなら
私以上に大切な家族がいる人と一緒にいる方が気が楽かなって。
本気で好きになられても応えられない私にはこの関係がちょうど良かったんだ。
･･･にしても健人は器用な人だな。
私の事本気なの？って、錯覚するくらい大切にしてもらってる気がする。
もちろんそんな事ないんだろうけど
とっても恋愛に向いてる人なんだな。
･･･ヒロミツとは真逆。
「たまには飲もっか。」
チュってキスを落としてキッチンにお酒を取りに行く健人。
一緒にいて全然嫌じゃないし
キスも、する事も苦ではない。
安らぎとは違うんだろうけど。
私が私で居られる、不思議な人だ。
体目当てかと思いきやそんなに求められる事が多い訳ではないし
健人が何を考えて私といるのかはわからないけど居心地は悪くない。
お互いほろ酔いになって抱きしめられた。
酔ってる時に抱きしめ返すのは好き。
思考の回らない頭でヒロミツを思い浮かべて背中に腕を回せるから。
もう一度、もう一度だけでいい。
ヒロミツともう一度。
抱きしめ合える日が来るなら私はなんだって出来そうな気がする。
そんな事を考えながらヒロミツじゃない人のキスを受ける私は今何をしてるんだろう？
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作者名：Haru
| 作成日時：2018年2月25日 21時
