おひとりさまの憂鬱

１８. 大倉side ページ18

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「忠義、来てたんだ、」


「おかえりー、どやった？送別会。」


「･･･うん。」





やっぱ元気ない。
つか心ここに在らずって感じ。




飲みすぎたんかなって心配で傍に行ってみたけど
薄く笑ったAはそのままお風呂場に行ってしまった。



異動、落ち込んでるんやんな。



彼女になってくれたから万々歳、って訳ではなくて
俺がAを心の底から笑顔にさせることって難しいなって思う。



彼女のバイブルは仕事やから。


それが"彼氏"やったらええのになって思うけど
それは俺の勝手な希望で。



俺なんか仕事よりも好きな人との時間が大切やし
それが人生の全てでええわけやけど
Aがそうじゃないってのは理解せなあかんとこ。


俺にとっての仕事はそんな人生を少しでも豊かにさせるための手段やけど
Aは仕事が上手くいくことが人生の手段のように感じてそこはどうやっても埋められへん。



だから、彼氏として俺はAの癒しになりたい。



そう思うのに
風呂から出てきてもAはずっとぼんやりしていた。



そんなAの隣に座ってみる。





「荷造り。どうすんの？まだ全然ちゃうん、」


「あ･･･うん、引越し屋さんにやってもらうつもり。」


「えーなー、金にもの言わせるんか！俺もうやってもーたで？」


「･･･そう。･･･早いね、」


「早ないやろ、引越し三日後やで？」


「うん･･･そうだね。どうしよう。」




なんやねん、
これから大阪での同棲が始まるというのに
浮かれてるのはやっぱ俺だけ。


惚れた方が弱いのはしゃあないけど寂しいもんや。




「おいっ、」




思わずAのほっぺたを両手で挟んでみる。



「ひゃ？なにしゅんの？」


「おーれーをーみーてー」


「ふふっ、なになに？」




･･･かわい。
やっと目が合ったからチュッとキスをする。



良かった。
俺なんていないみたいに思われてる気がして
存在意義を無くしかけてたあぶない。




「今日なんかあった？」



やっぱ送別会でなにかあったのかなって。


そんな俺の質問にAは少し目線を泳がせたから心がざわざわする。



「･･･なんにもないけど。」



けど？


ってなんやねん。


でもそれ以上は怖くて何も聞けなかった。

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