おひとりさまの憂鬱

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ミツさんの機嫌がいつにも増して悪い、気がする。


いや、彼の機嫌のいい時の表情なんて知らないし
もしかしたら今は今で楽しんでるのかもしれないけど。



･･･にしても、村上社長と忠義が知り合いであの企画に絡んでたなんて後で聞いて驚いた。


で、早速付き合うことになったのも村上社長に言ったのね。


仲良しの村上社長に嬉しそうに報告する忠義が目に浮かんで内心微笑んでしまう。



私が異動にならなければ
あの日、忠義と打ち合わせの仕事をしてたかと思うと
ちょっと小っ恥ずかしいような、むず痒さがあるけど
私達は付き合うことになったんだし
あの場で顔を合わせなくて良かったんだと思ってる。



彼氏と仕事とかさ･･･ちょっとやりにくいよね。



･･････っていうくらい
忠義とはあれから結構ちゃんとしたカップルになってる自分が新鮮だ。



仕事ばかりで適当に恋してきた自分にとっては
忠義は今までとは違う、少しワクワクした気持ちもある。



大人になったからかな。
いや、忠義の人柄かな。



･･･大学時代、ちょっといいなって思ってた人との恋愛って悪くない。



忠義の前では虚勢を張らずに済むし
思ったこともなんでも言える。



大阪で一緒に住む事も決まったし
そういう意味でも心から安心するっていうか
気持ちが安定するっていうか。



でも、かと言って
大阪への左遷は私にとっては屈辱的でしかない。



いくらプライベートが満たされていても
悔しさだけはずっと心にあるし
異動を言い渡されてから気が晴れることはなかった。



この送別会、も本当はどんな顔をしていいかわからなかったけど
二人の気遣いに応えなきゃってのと
･･･落ち込んでるって思われたくなかった。


こんなことくらい平気。
さすが逆境に強い一ノ瀬さん！
･･･って。


思われたい、
この期に及んで、ダメージなんて受けてない私を取り繕いたかった。



でも、地方への転勤、という衝撃は
どれだけ取り繕ったってみんなわかってるんだよね。



"かわいそうな一ノ瀬さん"



そう思われることが1番の屈辱だけど、ここはもう開き直るしか無かった。



笑顔を貼り付けて
二階堂くんと幸田さんとバイバイして。



でも、ミツさんとは駅まで同じ方向で
あと少しでこの作り笑顔の限界に近付いて来た時
ミツさんが足を止めた。

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