魅惑的ミルフィーユ

「恋は軟弱」園田side -Haru- ページ9

・





「車の方が早いだろ、」




そう言って社用車の鍵を持つ北山部長。



北山部長のっ、じょ、助手席に乗れる日が訪れるとは･･･、



一瞬躊躇したものの、仕事仕事、と言い聞かせて
動揺を隠して助手席に乗り込んだ。




ふわっと香る車内は
北山部長の部屋の香りが少しだけ漂って勝手にドキドキする。
距離も近い。





「電車で行ってたら時間くうだけだろ？こういう時はおまえのお得意の甘え方で誰でもいいから使えそうなやつ連れてけばいいんだよ、その方がアンケートも早く集まるし。効率をまず考えろ。」


「は、はぁ。」




言ってることはわかるけど
"お得意の甘え方"ってなんだろう、と引っかかる。




目的の駅前に着いて
早速アンケートに答えてくれる人を探す。




そこで部長はいきなり私と向かい合わせになって
下ろしてる髪の毛を耳にかけてきた。





「園田は男担当。俺は女性に声掛けっから。いい？」


「は、はい、」




なぜ？
いや、そんな事より北山部長の指の熱が私の耳元に残ってて
体が熱くなってアンケート所ではないんですが。



なんでいきなりこんな事するんだろ、
ホストかって。





「聞いてる？園田、」


「へ？」


「とりあえずニコニコ話しかけりゃ、応えてくれっから。堂々と声かけろ？」


「あっ、はい！」





とりあえずニコニコね。
オッケ、得意分野だわ。




「アンケートにご協力頂けますか？」



道行くサラリーマンらしき人
学生、年配の方に手当り次第声をかけていく。



半々の確率で応えて頂けて
前にやった時よりだいぶ効率がいい。



ふと、遠くの北山部長に視線を移すと
えらい距離の近さで学生らしき女の子達数人とわちゃわちゃ話してる。



･･･なんだあれ、ナンパじゃん。
私が男性で部長が女性担当って
なんだかんだ言って部長が女の人と話したかっただけじゃないの？



私なんて、男の人に話しかけるのめっちゃ勇気いるのに。
ひどいっ、



それから部長が気になってちらちら見ると
案の定綺麗な人ばっかり捕まえてるじゃん！



･･････もやもや。






悶々としてる所に肩を叩かれた。






「おい、終わったぞこっち。」


「へ？」


「おまえ、なんだその面。笑えって言ってんだろ？」


「わ、笑ってますーっ、ほら、ほらっ、」





悔しくてにこってしてみるけど
なんだか顔がひきつってしまう。

※→←※

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す