魅惑的ミルフィーユ

※ ページ35

は？

安達にだけは言われたくねんだけど。

なんで好きな人に、違う子とお似合いとか言われてんの？

「…つーか、どうでもよくない？」


なんで。


ちょっと見てたらわかるじゃん。


俺と園田ちゃんが何でもないってことくらい。


「安達までそんなしょーもないこと言ってくるとは思わなかった」


安達が、がた、って立ち上がった。


「…ごめん。ちょっと用事思い出したから、帰る」


「アダッチー待って待って」


宮田が止めたけど、安達はさっさと席を立ってしまった。


「安達ってやっぱなんかノリ違くね？」

ヘラヘラした武田の声に、イラつく。

「黙れよ」

「おーこわ。玉今日機嫌悪ー」


「もー玉！アダッチー帰っちゃったよ？いいの？」

「いいんじゃん、別に」

「玉ぁ……じゃあ俺追いかけて一緒に帰るよ。絶対傷ついてるよ、アダッチー」


宮田が立ち上がったのを、止める。


「いい。やっぱ俺行く」


そう言って、居酒屋から走って安達を追いかけた。


くっそ、いないし。

けど駅だよな、帰るなら。

と思って、駅までの道をひたすら走ってたら、安達の後ろ姿が見えた。


　
安達、って声をかけようとして、俺は思わず言葉を飲み込んだ。


安達の視線の先には、北山部長がいて。

部長は安達の頭を何度か優しくぽんぽん、ってしたあと。

背中に手をまわして、二人は歩いて行った。


俺はまだ整わない息を、何度かはいて。


そのまま何もできずに立ち尽くしてた。




・




翌日。


さらに最悪な話をまた武田が言ってきた。


少し前から元気がない園田ちゃんとお昼食べ終わったあと、自販機に飲み物買いに行ったら。


武田が来て、無視してたのに勝手にペラペラ喋り始める。

その場から離れようとしたのに。


「北山部長と、安達ってできてんだね。」


否応なく飛び込んでくる、武田の声。


「知らなかったー、玉森、知ってた？
早く部長に会いたくて昨日安達の態度悪かったのかなー」

知らねーよ。

昨日の二人見てたらそうかもしんないけど、少なくとも武田から聞きたくない。


「それ、本人に聞いたの？」

「聞いてねーけど。抱き合ってたとこ見たの。決定的っしょ？」



……抱き合ってた？


あの時二人でどっか行ったあと、ってこと？



さすがにそれは。


決定的、かも。



園田ちゃんを見ると、泣きそうになっててとりあえず座らせる。



「･･････失恋、か。」



自分の呟いた声が自分にぐさって刺さってる。

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