キミの襟足にキスがしたい ２ 【完結】

６０ ミツside ページ11

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「で？なんでこんな事になるわけ？」




眉間にしわ寄せた横尾さん程怖いものはないと思う。



樹里と二人、肩を並べて項垂れるしかない。




「あ、の、ごめんなさいっ、ミツさんに･･･悩みを聞いてもらってて、ミツさん、優しいからつい、なんていうか、ハグ？したくなっちゃって、」


「うん、そう、これはな、友情のハグなんだよ。樹里が凹んでたからさ、元気付けてやろう、みたいなさ？」


「そんなの勝手にやってくれりゃいいけど外でやんなよ。」





ですよねぇ。
ごもっとも。
むしろなんの後ろめたさもないから出来ちゃう事なんだけどさ。




「ミツは今女性ファン増えてきてんのに、こういうの致命的なんだよ、しばらくは女遊び控えろって言ったけどちゃんと守ってるだろうな？」


「遊んでねーよ。つか、俺アイドルじゃねーぞ？」


「アイドルじゃなくても今おまえ注目されてんだからな？わかってる？自分の立場。」






･･････わかんねーよ。
なんで俺が女のファン気にして私生活窮屈になっちゃうわけ？



･･･って思うけど、目の前の鬼が怖すぎて言えねぇ。






「･･･でも、樹里にとっちゃ好都合だ。」


「は？なんで？」


「この前こいつ既婚者と撮られただろ？ミツとの写真はノーコメントで、ミツの方と付き合ってるって世間に思わせる方がいい。」


「おいっ、俺今キてんじゃねーのかよっ、」



･･･こわいこわい。







女優の卵だった樹里は結構頑張ったんだ。



オーディションを受けまくってドラマにも出れるようになって今や結構名が知られている。



知られ出した途端、俳優の既婚者と撮られたんだ。
樹里が悪いよ。不倫なんて。



だからその時の横尾さんの怒りったらなくて
俳優側の事務所にもめちゃくちゃ抗議して
記事内容は事実無根だと嘘のコメントを出させた。



もちろん樹里にも雷が落ち
女優の道かその男かどっちか選べ、と二択で迫り
樹里は女優を選んで、今ここにいる。





つーか横尾さんのその強硬姿勢が樹里を追い詰めてんのに。



だから俺がフォロー回ったんだぞ？
そしたらこんな事になっちゃったんだぞ？





････ってのも怖くて言えねーけど。




樹里は頑張ってんだよ。
急に売れだして戸惑いながらもなりたかった女優業に励んで
たまたま好きになった人が既婚者で、
でも当たり前かもだけど、別れさせられて。




うちみたいな弱小事務所に入ってくれてる妹みたいな樹里をほっとけないだろ？

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