キミの襟足にキスがしたい

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「よかったの？断って。気を使わせたならごめんね？」


「全然。むしろよかった。あんまり新しい恋とかそんな心境じゃないから。」


「･･･そっか。こんな時に言い難いんだけどさ、私も･･･実は結婚が決まったんだよね。」


「え？！そうなの？言い難いとかそんな事言わないでよ、いつ？おめでとう！」


「ありがとう。プロポーズされたばっかりで今から式の日取りは考えて行くとこなの。」


「そっか。招待してね？」


「ありがと。その頃にはAも気持ちが落ち着いてたらいいね。」







そうだね。



みんな結婚しちゃうのか。
寂しいけど、楓が幸せになるのはいい事だ。



･･････って思わないと、ダメだよ。
一人取り残されてる気持ちになんてなっちゃダメ。



･･････でも、私、また人を好きになれるのかな。
全然自信ない。




駅で楓と別れて腕時計を見ると９時半。



１０時過ぎには帰れるかな。



早くミツの顔が見たい。
私の作った生姜焼きでミツの美味しそうな顔を見ながらお酒飲まなくちゃやってらんないよ。




逸る気持ちを抑えながら切符を買おうと券売機に並んでいたら、ふわっと知ってる香りが漂ってきて思わず後ろを振り返った。







「･･･送るよ。」






太輔だ。
どうして方向が違う太輔に送られなきゃいけないの？





「いいよ、大丈夫。」


「ちょっと話したい事もあるし。」





話し･･･？



やだ、森さんと結婚するとか言わないでよ？



これ以上、惨めな思いしたくないよ。



しかも、そんな報告、律儀に元カノに報告とかいらないんだけど。






「あのっ、今日は忙しいからっ、」


「･･･誰かと待ち合わせでもしてるの？」


「いや、そうじゃないけど、」




どんな断り方よ。
こんな夜に忙しいとか、太輔から逃げてるってバレバレ、





「時間は取らせないから。だから送る。」





そう言ってさっと家までの最寄り駅までの切符を二枚買ってしまった太輔の後をついて行くしかなかった。









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「タカシ、幸せそうだったよな。」


「うん、そうだね。」


「寺嶋さんのご両親も泣いてたから俺もうるっと来たわ。」


「うん、そうだね。」






二人並んで電車のつり革を持ってそつのない話。



話したい事って、なんだろう？







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