ジオラマに夜を咲かせて【完結】

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「おまたせしました、」





気がつけばAちゃんが俺の席の横に立っていた。




「あ、うん、来てくれてありがとう、座って？」



あんなに来るのを待ちわびていたのに。
いつの間にかドアの開いた音にも気が付かないほど
どう想いを伝えようか考え込んでいたらしい。




戸惑いながら正面に座る彼女に
まずは何から話そうか。



そして、今確信した。


やっぱり俺、この子が好きなんだ、って。




「お久しぶりです、お仕事でこちらへ..？」


「や、違う、会いたくて、来た。びっくりするよな？ごめん、」


「い、いえ、」




オーダーを取りに来た店員に紅茶を注文してる。



レトロなティーカップに入った紅茶が運ばれるまで、俺達は黙ってた、



っていうか、いざAちゃんを目の前にすると何から話していいかわからなくて。



Aちゃんはなんで俺がここにいるのか混乱してるようだし。





「涼しくなってきたよな。」




熱いティーカップをてのひらに包むようにしてるAちゃんを目の前で見てると不思議な気分だ。



あれから３ヶ月経ったんだなって。



あの日は、あっつい炎天下で二人でジェラート食べたり。
汗だくで飲んだコーラの味とか思い出してしまう



くらい、Aちゃんとの思い出は
あの日の楽しかった記憶が濃厚すぎて
今の二人がぎこちないのが嘘みたいだ。



でも、俺達の関係はこっちが本当なんだよな。



あの時は、俺は"仕事"で彼女は"依頼主"っていう歪な関係だったんだし。



そんなことを考えてると
突然彼女が口を開いた。





「あ、あのっ、北山さん、心配してもらわなくても私、そろそろ結婚、とか考えてますからっ、」





え？






思ってもみない、彼女からの言葉に驚きを隠せない。



今でもAちゃんが俺を好きだと思い込んでた自分が途端恥ずかしくなった。



そりゃそうだよ、Aちゃんは俺とは違う世界線に住んでて、ほんとは俺が交わる人生なんてないんだ。
こんないい子、その気になりゃ相手だってすぐできる。




まじ、俺何しに来たんだか...




落胆からふと視線を落とすと、Aちゃんの手が小刻みに震えてるように見えた。



え、なんで？



もう一度彼女の顔を見ると
あの日車の中で初めて会った時の表情とよく似ていて、緊張してるみたいだ。



結婚相手がいたらもう俺とは顔も合わせたくないよな。



会いになんか来て迷惑だったんだ。

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