You love me？３

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「いらっしゃいませ。今日はどうされますか？」


「髭剃りとシャンプーだけお願い。」





はいはい！と威勢よく返事をして
父親と準備を始める。





あの夢のような一日から三ヶ月が経った。




父親の理容室は思ったより忙しくて
母親がいないとそりゃ、やっていけないよねーって実感。



母親は病状は安定してるけどまだまだ退院はできないらしく、やっぱり私はここへ帰って来て良かったんだな、って思う。




スタイリストの仕事は
理容室の合間にちょこちょこと始めてみた。



一度離れてみたけどやっぱり好きなんだなって事が分かったのも収穫だったかもしれない。



今は地元のテレビ局の一番組だけ、出演者の服を担当してる。



貯金全部無くなったし。
実家暮しだから助かったけどまたコツコツ貯めて
北山さんに会いに行こうかなーって。
コンサート巡りしたいっ。



あれはひと夏の夢だったから。



だからあれはあれ。
アイドルの北山さんに会いに行くんだからいいよね？




三ヶ月経ったんだ、って思えない程生々しく残る記憶は
私の中で消えて欲しくなくて毎晩反芻しては悶えてる日々。



素敵な夢だったな･･･



アイドルも、裏の仕事も全力な北山さんてほんとすごい、尊敬。更に好きになったもんっ、



もう一度お金を貯めて北山さんと･･･って
考えがなかったわけじゃない。



でも、最初で最後だったからいい思い出になってるんだって思い直した。



二回目でドツボにハマって抜けられなくなって自分を見失うかもしれないって恐怖もあるし。



これ以上叶わない相手に体の関係だけでハマっていくなんて身を滅ぼしちゃう。



ほんとはボロボロになるまで北山さんにハマりたい気持ちはあるけど、現実的には無理だしね。




カランカラン、とまた音がして
いらっしゃいませ！とドアに視線を送る。








「･･････来ちゃった、」





そこには、バツが悪そうな顔の
三ヶ月前、私の初めてを貰ってくれた人が立ってた。




「･･････きた、やま、さん？」



「久しぶり、Aちゃん、」







潔く諦めた人だったのに
この人は私にとっては切っても切り離せない人になりそうだ。




真夏の夢



じゃなかった。



あの時見せられた顔はいい人、しかなかった彼だけど
もしかしたら北山さんってめちゃくちゃ悪い男なのかもしれない。




･･･それでも好きだけど。



そう思う私はもう北山さんから抜けられない。






FIN

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