君のその手に ーspinoff ー 桐谷麗華の恋。【完結】

７ ページ7

・






それから三ヶ月
季節は夏になった。



△会社には上田くんと行ってたけど
田島さん、視線が怖いのよね。
いやらしく見られる視線が痛くて二人きりにならないように注意してた。




きっと、あの北山くんが殴り掛かったという日。



北山くんにはもっとエグい下ネタでも言ったんだろうって容易に想像出来て
だからこそ、そこにキレた北山くんに申し訳なさがありつつ、可愛いな、と思ってしまう。



あの歓迎会以降、北山くんは何かと私に絡んできてはふふっと可愛い笑みを残してく。




それは
「今日上田さんと三人でランチ行きません？」


だったり


「今日めちゃくちゃデカい所と契約取れたんですよ！」


ってドヤ顔で褒めて褒めてって尻尾振ってたり そうかと思えば



「田島さん、平気っすか？」



っていきなり男の顔で心配してきたり。



特別用事もないのに
何かしら話しかけてくる彼が可愛くてたまらない。


そんな時、時期外れのが辞令が下りた。



西部長の他店への異動に伴う
私の部長への昇格。



正直驚いた。
こんな話し小沢からは聞いてなかったけど
これは確実に彼の采配だと思ったから。



家に帰って彼に訊ねると
あたりまえのように



「俺の将来の片腕になってもらうんだからそれなりに準備しといてもらわないと。」



と言われてしまって落胆した。



そのつもりではあった。
でも、私はそのつもりで彼を選んだわけじゃないのに。



これじゃあまるで皆が言ってる通り
昇進目当てや財産目当てで結婚したんじゃないかと言われても何も言い返せない。



現に私の同期は皆課長止まりで
まだ、役職がついてない人だってザラなのに。



ここで私が、
しかも女として異例のスピード出世なんかしちゃったら同期に顔向けできないじゃない。









・









「順等だな。」


「嘘！そんな訳ないよ。」





同期の内田くんは私の中で一番出来ると思ってる同期。




「桐谷はその辺の奴らより売上も取ってたし能力は誰もが認めてんだからさ。それでも僻んでくる奴もいるだろうけど。悔しかったらもっと頑張って見せつけてやりゃいいの。」


「･･･内田くんは？悔しくないの？」


「うーん、ま、俺もそのうち部長にはなるだろうし。でも、桐谷もそろそろこの会社背負って立つ覚悟、必要だと思うぞ？」




あっさりとそう言われて青臭い事思ってた自分を戒めたと同時に、皆から認められるようにこれまで以上に頑張ろって気合い入れた。





・

８→←６

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す