君のその手に ーspinoff ー 桐谷麗華の恋。【完結】

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沖縄旅行の後
伊藤さんとどう接したらいいのか本当に困った。


わかってはいたけど伊藤さんからも特に宏光との事を聞かれる訳じゃなかったから、私達は暗黙の了解でその事はなかったことにして仕事に取り組む。



そんな時、宏光と行くはずだったパーティの日
急用ができて行けなくなってしまった。




小沢の接待に私が必要らしい。



そうなれば必然的にそっちが優先なわけで
相手先もそれなら代わりに伊藤さんを、と指名があったので伊藤さんに託す事にした。




･･･本当は嫌だった。



煌びやかな席に、宏光と二人にさせてしまうのが。



でも、参加してもらうからには完璧な状態で伊藤さんに仕事して来てもらいたい。



私のドレスを着てもらって
メイクも少し足して女らしく髪の毛もセットして･･･



私にされるがまま、まるでマネキンのような伊藤さんが可愛いくて軽い嫉妬心すら沸く。



普段、着慣れてないだろうドレスも逆にそれが初々しくて素敵だったしいつもと違う派手なメイクもよく似合う。




･･･宏光が、この伊藤さんの姿を見て心が揺れないのか心配で堪らなかった。





私も、もう気持ちの制御が付かなくなってきてた。



だから小沢との仕事が終わった後
怪訝そうにしてる小沢にちょっと出かける、と不自然な説明をしてその足で宏光の家に行ったんだ。



もう日を跨ぎそうな時間。


パーティはとっくに終わってるしまっすぐ帰れば必ず家にいるはずだから。



でも、宏光の部屋のインターフォンを鳴らすも反応がなくてまだ帰ってないんだってわかったらいても立ってもいられなくなった。



伊藤さんといる？
こんな時間まで何をしてるんだろう？


もしかして、二人でホテルとか行っちゃった？


考えるだけで頭と心が嫉妬で渦巻いて気が狂いそうだ。



だから普段滅多に掛けない電話を掛けてみる。









「･･･出ない、」






何度コールしたかわからない。



家にもいない、電話にも出ない宏光が
一気に遠くなった気がした。





苦しくて苦しくて
宏光が愛しくて愛して欲しくて
でも、宏光を私が縛る事なんて出来なくて。




スマホを片手に宏光のマンションの入り口でうなだれる。





・・・もう、続けちゃいけない




そう、思った。






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