君のその手に ーspinoff ー 桐谷麗華の恋。【完結】

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伊藤さんは言いふらすような事はしないだろう。






でも、ただただ、醜態を部下に見られて本当に恥ずかしい。



それに･･･



伊藤さんはまだ、宏光が好きなんだよね？
顔見たらわかる。



どう思っただろう？
私と、キスしてた事。



宏光に好きだって告白したんだろうか？
宏光は彼女の気持ちに気が付いてそうなのに、それでも相沢さんとこの沖縄でいい雰囲気で。






･･･嫌だな。結局ずっと宏光の事ばかり考えてしまう。




自分の部屋に戻れば、もう既にベットで寝ている夫の姿にほっとする。



こんな事があった直後にどんな顔して話していいか
さすがの私でも躊躇したから。








自分のベットに腰掛けて大きくため息を付く。







宏光、あれから伊藤さんにどう説明したのかな。



今更ながら自分だけ逃げてきてしまって残された二人のやり取りが気になってきた。



あんな現場を見られて誤魔化しようがない。



私の事、なんて言う？



適当に遊んでる女の一人って言ってもらえればまだ逃げ場があるんだろうけど、伊藤さんだけには、私の事が本気だってちゃんと言ってくれないかな、なんて･･･



ダメだ。
変な嫉妬や保身、
宏光への気持ちが大きすぎて自分で持て余してしまう。






立ち上がって部屋を出た。





ここは、プライベートビーチがあるホテル。




宏光と夜会おうねって約束したんだ。
小沢が来る事になってそんな約束勝手に無かったことにしてたけど･･･




来ないかもしれない。



でも、さっきの宏光は私の事まだ変わらず好きでいてくれてるから･･･



少しの期待を持ちつつ海への階段を下りる。





潮風とともに視界に広がった夜の海は
月明かりに照らされてこんなに暗くてもどこかエメラルドグリーンの輝きがある。






砂浜に腰を下ろして、目を瞑って波の音と潮風に身を任せる。




余計な事を考えたくないのに
それでもどす黒い考えが頭を駆け巡る。



嫉妬なんて私らしくないじゃない。



これからも宏光と続けたいならこんな気持ち、封印しないと続けられない。



なに本気になっちゃってるのよ？
相手は将来有望な若者でしょ？
いつかは去ってく人なんだから･･･、









・

ふと人の気配がして
宏光が来たんだってすぐにわかった。



ふわり、と宏光の香りとともに隣りに並ばれた。

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