帰ってきた「君のその手に」【完結】

３ 北山side ページ3

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複雑な心境で仕事を終え
家に帰るとAの方が今日は先に帰ってて笑顔で迎えてくれる。


自然とつられて俺も笑顔でただいま、と言った。


ほっとする。Aの顔見ると。



着替えてリビングに行くと
テーブルの上には所狭しと夕飯が並べられていた。




「今日、朝ご飯さぼったから。頑張ってみた。」



食べよ？そう言ってエプロンを外しながらニコニコと椅子に座るAはマジで完璧な嫁だ。





「なぁ？嬉しいけどいつもこんな頑張んなくていいぞ？おまえだって俺と同じだけ働いてんだしさ。たまには出前取ったっていいんだし。」



「そんなんじゃ栄養が偏っちゃうじゃん。大丈夫。作るのは苦じゃないから。朝ご飯食べてないんだからいっぱい食べてね。」




･･･本当はそろそろ仕事辞めてほしいな、って思っちゃうのは無理させたくないから。


･･･それと、俺だけのAでいて欲しいから



とか考えるのはワガママだってわかってるから黙っとく。






いただきます、と手を合わせて沢山のおかずの中から何食べよっかなーって迷ってる時。






「ねぇ。桐谷部長、辞めるらしいの。びっくりしてさ。」



少し緊張した声が聞こえて
そうだ、本社への異動の話しもしなきゃって。



「俺も、聞いた。でさ？入れ替わりに俺、本社へ戻れる事になったんだ。」


「･･･そうなの？」


「あぁ。来月から。でも、課は三課だから。」





元々藤ヶ谷がいた所に行くらしい。
藤ヶ谷は俺がA支社に行った時に一課に来てそれ以降まだAと一緒に働いてる。



俺が異動になる時、桐谷部長と抱き合ってる現場を見られたのにそれでも悪いようにはしないって言ってくれた内田部長の下。
その恩義を受けられるのはありがたいことだった。




「でも、夫婦が同じ社にいるのってダメなんじゃなかった？私、どこかに異動になるのかな？」


「･･･おまえはなんも聞いてないよな？崎本部長の話ではAはそのまま本社っぽかったんだよ。」


「そうなの？」


「ま、俺が仕事出来るって事だからさ〜、特例？」


「･･･桐谷部長もご主人の小沢専務と同じ社内だったもんね。ってそこまでのレベルじゃないか。」


「そこと比べんなよ〜。」




とか言ってみたけど。
桐谷部長が離婚する話はAになんだか言えなかった。


それは崎本部長に口止めされてたからってだけじゃない。



桐谷部長、



･･･麗華さんの身の上が気になって仕方なかったからだ。





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