帰ってきた「君のその手に」【完結】

１９ 北山side ページ19

そんな俺の顔を見てまた麗華さんは可笑しそうに口に手を当てて笑い出す。





「宏光っ、言いたい事、全部顔に書いてあるわよ？」


「･･･そ、そう？」


「あー、なんだか今日は宏光が恋人じゃなくて子供みたいに見えて可愛い。」





あ、もう恋人じゃないけどさーだって。
可愛いってなんだよ、俺のプライドがぐにゃってへしゃげる音したんだけど。





「浮気よ、浮気。」


「へ？」


「小沢がね、若い子と。長かったらしいわ。」




そんな･･･、
じゃあ、麗華さんが俺と会ってる時
小沢専務も他の子と会ってたって事？




「責められる立場じゃないわよ。私だって宏光とは長かったんだから。だからそれはいいの。」


「･･･よくねーだろ、」


「彼の浮気よりなにより、私は宏光を見てて彼は違う女の子見ててね？なんだかバカらしくなったのよ。夫婦ごっこ？ってやつが。」


「でも、小沢専務はきっと麗華さんのこと愛してたと思うよ。」


「そんなの、私にはわからなかった。私の欲しいものは何でもくれた人だったけど、愛してくれてたかどうかなんて･･･」




そうかな。
小沢専務がどこまでその浮気相手に入れあげてたかなんてわかんないけど、いつも麗華さんといる時の小沢専務はめちゃくちゃ頬が緩みっぱなしだったのを俺は知ってる。



だから、その度にめちゃくちゃ嫉妬してたんだよ。





「それが見えないくらい、私は宏光だけになっちゃってたってことかもしれない。ね、そんな二人が夫婦なんてやってけるわけないよね。」



「･･･そんな、俺だけになってるとか微塵も見せなかったくせに。」





最後の最後はそうだったのかもしれないけど
基本、麗華さんはいつも冷静で俺だけが熱く求めてて･･･、



それなら俺だってマジで本気で、麗華さんをモノにできるように努力したかもしんないのに。



今更そんな事言うなよ、って。
どうしようもない過去が頭を駆け巡って
その時どうにもならなかったジレンマを思い出してイラついてくる。





「あ、宏光、怒ってる。」


「･･･怒ってねーわ。」


「怒ってるって。」


「怒ってるとしたら、離婚した麗華さんにだよ。」


「あら。」


「幸せにやっててくんねーと、別れた意味ねーじゃん。」

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