帰ってきた「君のその手に」【完結】

１６ 北山side ページ16

「北山っ、とりあえず落ち着け。おまえがバカな事言うと余計伊藤の呼吸が乱れるから。」




はぁ？意味わかんねー。
目の前で俺の嫁を抱きかかえて何平然としてんだって怒りしかなくて。



･･･でも、
確かに変だ。



酔っ払ってるわりに、苦しそうにずっと肩で息をしてて
こんなA見た事なくて。




「･･･過呼吸？」



ようやく少しずつ崎本部長が言った言葉を頭で反芻出来た。




「あぁ、とりあえず何らかの疲れやストレスだ。息が出来なくなんだよ。酸素を吸いすぎてるのが原因だからこうして二酸化炭素を吸わせると楽になんだ。」




酒飲み過ぎて吐いてるんじゃなかったのか。



ストレス･･･？
なんで俺の知らない事を崎本部長は知ってるわけ？
崎本部長には何でも話すんだ。
なんだよ、俺、そっちのけかよ。なんでだよ？





「･･･崎本部長、まさかAとより戻そうとか考えてないですよね？」




嫉妬と自分を置き去りにされた悔しさと
やっぱりこんな時ですら大人な崎本部長の方が頼れんのかよっていうプライドをズタズタにされた気分だ。




瞬間、Aが驚いたようにこっちを振り向いて涙でいっぱいの目で睨んできた。





「北山、マジで落ち着けって。そんな事考えてないから。それよりさっき桐谷といたとこ見て、伊藤、動揺してるみたいだ。ちゃんと説明してやれって。」




まるで子供をあやすようにしっかりと俺の目を見る崎本部長。



あまりにもガキな俺が恥ずかしくて思わず目を伏せた。





伊藤っ、て崎本部長の叫び声が聞こえて振り向くと走ってるAの背中が見えて思わず追い掛けたけど･･･



やっぱり誤解、してるのか？



弁解しようとしてここまで追い付いたら
こんな状況だったわけで、頭が混乱する。







・・・弁解






確かに何も無かった。
久しぶりに会って、二人で飯食っただけ。






でも･･･
俺の気持ち、麗華さんに全く傾かなかったかって言われると全否定出来ない所もあって･･･、






・・・今の俺、Aとなんの話しをしたらいいんだ？








・

１７ 北山side→←１５

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す