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「行ってきます、」
「行ってらっしゃい、行ってきます。」
同じやり取りでも今日からは違う。
宏光が先に本社の最寄り駅に着いて
私はそれからまだ電車に揺られる事になる。
普段なら絶対にしないのに
電車の中で私の頭をポンポン、と叩いて電車を降りていった宏光。
よし。頑張らなきゃ。
元々私は本社勤務前はずっとそこにいたんだから。
顔見知りばかりだし愛着あるし、居心地のいい職場に変わりない。
通い慣れた道に少しの懐かしさを感じながら
支社まで辿り着き、深く深呼吸をした。
早い時間だけど、きっともう来てる。
崎本部長の課、第二営業部のフロアに足を踏み入れる。
ほら、来てる。
誰もいないフロア、
一人パソコンに向き合ってるその姿。
少しネクタイを緩めてる崎本部長は、私と付き合ってた頃のまんまだ。
いつもこうして崎本部長を遠くからよく眺めてたっけ。
随分前の事なのに、いとも簡単に思い出してしまう、あの頃の甘酸っぱい気持ち。
って。
ダメじゃん。極力こういう事も考えないようにしないとね。
瞬間、崎本部長が視線を上げて私を捉えた。
「おっ、来たか。」
ほら。大丈夫。
なんの他意もない崎本部長の笑顔。
私もニコリと笑っておはようございます!と元気よく挨拶をした。
部長のデスクまで行って今日からよろしくお願いしますっ、と頭を下げた。
「びびるよなー、この人事。北山の代わりにまさか伊藤とはな。」
「はい。びびりました。」
仕方なく二人でクスクスと笑うしかない。
「A支社で多数の取り引き先に随分気に入られてたらしいじゃん。それで本社で勉強させてすぐに戻すつもりだったらしいよ、上は。」
「そう、なんですか。」
「俺は伊藤が本社に行った時にこっち来たから知らなかったけど。伊藤の方がA支社では俺の先輩だな。よろしく頼むよ。」
「先輩なんてっ、やめてくださいよ。」
「いや、北山がいなくなってどうなる事かって思ったけど、良かったよ。ベテランのおまえに来てもらえたのは。」
「・・・ありがとうございます、頑張ります。」
新人だった頃出会った崎本部長にベテラン呼ばわりされる事がくすぐったいけど、そんな風に言って貰えるなんてめちゃくちゃ嬉しい。
宏光が使ってたというデスクが私のデスクだ。
引き出しを開けると”頑張れよ!”って
宏光の字で書かれたメモがあった。
うん、頑張る。
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haru070917(プロフ) - ありがとうございます。でも北山夫婦のこれからも知りたいかなまた書いて下さい (2020年1月20日 21時) (レス) id: 6044a23124 (このIDを非表示/違反報告)
Haru(プロフ) - あやかさん» 本編読み終えて下さったんですね!長い時間お疲れ様でした^^;ありがたいです。続編というか完全に桐谷部長のお話になるのでまた、趣向が変わるかもです。が良ければお付き合い下さいーっ♪ (2019年12月21日 21時) (レス) id: 476aea9d9a (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - 完結お疲れ様でした!遅ればせながら、本編を読み終え、自分の気持ちの中でとても上がっている作品なので、また続編を書いて頂けるなんて、とても嬉しいです(^^)楽しみにしています! (2019年12月21日 18時) (レス) id: d1d73bb006 (このIDを非表示/違反報告)
Haru(プロフ) - りーちゃんさん» 素敵と言ってもらえてほっとしました。読み応えあるものを、と思っていたので嬉しいです(T_T)こちらこそ、ずっとお付き合い下さってありがとうございました!!(^^) (2019年12月21日 13時) (レス) id: 476aea9d9a (このIDを非表示/違反報告)
Haru(プロフ) - nanacoさん» スッキリできてたー?いつもラストは難しいなって思うよ^^;nanacoちゃんもずっと読んでくれてありがとー!スピンオフもよろしくね♪ (2019年12月21日 13時) (レス) id: 476aea9d9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Haru | 作成日時:2019年11月23日 20時