女心とミツと空。【完結】

３０ 北山side ページ30

可哀想ってなんだよ、
アイドル好きで何が悪い？
世の中アイドルが好きでそれが生き甲斐でＣＤ買ったりコンサート行ったりすんのを死ぬ程楽しみに生きてる奴が五万といんだよ。
それで仕事や辛い事頑張ってんだよ。失恋したってそれで立ち直るやつだっているんだよ。生身の生々しい、くだんない現実を忘れさせて夢見させてくれんだよ。それをバカにするような奴な、そんな奴の方が可哀想そうだわっ、







・・・って。
頭を駆け巡ったけどそんな事、小坂に言ったってどーしよーもない。




さーっと、潮が引いたように気持ちが冷めて
ただのぶりっこなロールキャベツ女子、みたいな女が目の前にいただけ。




パッと手を離した俺を怪訝そうに見た小坂に
「やっぱごめん、もう会えないわ、」
とかなんとか適当に言ってその場でバイバイした。




最初から違う女とはハナから無理だったのに
何やってんだろ、俺は。







週明けAのフロアに顔を出すと
いつも通りキビキビと働いてる姿がそこにはあって。



ただ、先週変な帰り方したから。
ちょっと気まずくなりながらも声をかける。




「今日、飲みに行かね？」


「行かない。」


「なんで。」


「だって。･･････いいじゃん、予定ある。」





一瞬、目が合っただけでふいっと顔を背けられた。



こんなAおかしい。
やっぱ俺が変な態度取ったからだよな？



「な、この前ごめん。ちょっとさ、･･･うん、ごめん。片付けもせずに帰ってさ。」



＿＿＿＿＿拗ねたんだよ、おまえの返事に



そう言うのはなんかキャラが違う気がして言えなくて



また振り出しだけど
それでも俺はAとの時間がなにより大切だから。
振られてたってなんだって
もう嫌だって言われるまで一緒にいたい。





「彼女、小坂さんいるんでしょ？彼女持ちと二人で会うのとかもう嫌だし。」



ボソッと呟くような声がAの背中から聞こえた。





「彼女じゃねーし。何言ってんの、おまえ。」



「でも、いい感じなんでしょ？もう私なんかに構ってなくていいって。」





ん？
なんか怒ってる？




いても立ってもいられなくなってそのまま誰もいない会議室に連れてった。

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