中紅花の恋ーnakakurenai no koiー

２７ ページ27

ミツはずっと海を眺めてて
松田さんが帰って行った事はきっと気が付いてない。




サクサクと砂浜を歩いてミツの方へ近付くにつれ
波音も大きくなってく。




数メートル先まで追いついた時にミツ、と声を掛けた。



私の声に振り向くミツの顔。



その顔はいつになく真剣な表情で
なにかあったのかな？って。



ミツの隣に座るとすぐに訊ねられた。





｢･･･話、終わった？｣



｢うん、｣






それだけ言うと、また何も言わずに前を向いてずっと海を見つめてる。






｢･･･ミツ？｣



沈黙が怖くて声を掛けてみる。




｢俺さ、サークル入ってから可愛い子いんなーって思ってた子いんの。知ってる？｣



｢･･･桜子じゃないの？｣



ここへ来て、ミツから桜子の相談とかされちゃうの？



恐れてた事がついにやってきたって感じ。
私、ミツの恋の応援とか、出来るんだろうか？






｢桜子もいいなって思ってた。バレてた？｣




ミツの言葉が胸に刺さる。
わかってはいても直接聞いてしまうと
重い鉛を飲み込んだような沈んだ気持ちになった。




｢でも違うんだ。｣




・・・？




｢桜子じゃないの。｣



｢そう、なの？｣





じゃあ、誰の事言ってるんだろう、



ミツと仲良い女の子なんて他にも沢山いて
目星すらつかない。





｢でも、もしかしたらもう手遅れかな。その子、彼氏出来ちゃったかも。｣



｢･･･そうなんだ･･･。｣




そんな子いたんだね。
でも、その子には彼氏が出来て･･･。



ミツの想いが叶わなかった事に本当はほっとしてる。
でも、そんな気持ち悟られたくなくて、残念だったね、って絞り出すようにようやく一言だけ言えた。





｢でも、ダメ元で告白するわ、俺。｣



｢そうなの？｣





すごい。
私なんてもうミツにそんな子がいるんだってわかった時点で告白なんてとても出来ない。




｢カッコイイね、ミツ。｣



｢･･･かっこよくなんかねーだろ。振られるのわかってて告るとか。ダサくね？｣



｢ダサくなんかない。｣





私だって、勇気を振り絞ってミツが好きだって伝えたい。



この溢れてくるミツへの想いを知ってもらいたいって思うよ。



でも、もうミツは好きな人にこれから告白するんでしょ？
そんな勇気とてもじゃないけど出ないって。

２８ 北山side→←２６

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す