中紅花の恋ーnakakurenai no koiー

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｢おい〜、今の見てたろ？助けてくれって。｣





去ってくイケメンの背中を悔しそうに見つめながら
半ば諦めたように私の隣にドサッと座り込む北山、さん。






｢いいよ？行ってあげる。｣



｢え、桜子？｣
｢いいの？！｣




よっしゃ！ってニッコリ笑顔を向けられて
不覚にもドキッとしてしまった。




春の風になびく、金髪の肩まであるさらさらな髪の毛。
それはどう見ても苦手なタイプなはずなのに
その横顔につい見とれてしまった。





｢その代わり、あの藤ヶ谷さんって人紹介してよ？｣



いきなり？桜子、抜かりないんですけどっ。




｢あぁ？あんたも藤ヶ谷狙いなの？全くどいつもこいつもよー。｣






ぶすっとした顔も可愛いし。
この人、なんだか憎めないな。






｢俺は北山宏光。一回生。みんなミツって呼んでるから。そっちは？｣



｢私は橘桜子。一回だったんだ。先輩かと思ったっ。｣



｢先輩かと思ってその口の聞き方かよっ、｣



｢光川A、です。｣




同じ新入生なのに
なんでこんなに大学に馴染んでるんだろう。
その順応性が羨ましすぎる。





｢このサークルは大学も公認だし、変な心配いらねーから。気軽に来て？あとは･･･｣





ニヤリと悪い顔で私達を交互に見てる。





｢藤ヶ谷の隣り、特等席用意してやるから、その代わり勧誘手伝ってくんない？｣



｢えっ、そんなの出来ないしっ、｣



｢俺は女の子は無理だ。藤ヶ谷見てたらよくわかったし。男狙いで行くから協力して？｣




うんうん、って私達を値踏みするように上から下まで見つめられる。






｢ちょっとっ、なによっ？｣




｢･･･おまえら、よくよく見るとレベル高い。俺の隣りにいてくれるだけでいいからさ？たのむっ。藤ヶ谷に免じてっ、｣




最後は訳の分からない説得で
なんだか可哀想になって付いてくだけでいいならって了承した。









｢えーっと、桜子、とA？でいいよな？｣



｢いいよー。｣



｢うん･･･、｣






さっきからまったく会話に入ってない私もとりあえずうなずく。




桜子は名前で呼ばれる事になんの抵抗も見せないけど
私は内心ドキドキしていた。




父親じゃない男の人に初めて下の名前で呼び捨てされて
恥ずかしいような照れくさいような複雑な気持ち。




でもそれは全然嫌じゃなくて
むしろミツから発声される私の名前が特別なものに感じた。

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