君のその手に ーspin offー

※ ページ10

・




よりによって藤ヶ谷さんだよ⋯。



同じ課だった頃から私への心象は良くないんだろうな、とは察してた。



伊藤さんと話してるのを見た時あんな風に笑うんだってびっくりしたくらいだし。



別に仕事する上では支障はなかったし
普通に丁寧な指導もしてくれたりするから何の問題もなかったんだけど⋯




女として、となると全く自信はない。




私の事、好きになって貰えるにはどうしたらいいんだろ。



いや、とりあえず印象を良くしたい。
そこから始めなきゃ⋯って。









きっかけはたまたま会社出るタイミングが同じだった藤ヶ谷さんに声を掛けられて。



前いた課の様子が気になるって事で駅までの道を歩きながら話してたらもうちょい話し聞きたいって言われたんだ。



まさか藤ヶ谷さんと二人で飲みに行くなんて思いもしなかったけど仕事熱心な藤ヶ谷さんに協力するつもりで着いて行ったのに⋯



行ったお店には意気消沈の二階堂さん。
さっき店先で会った伊藤さんとお別れしたんだって事を私なんかにさらっと教えてくれた。



仕事の話をするつもりだった席は
二階堂さんの失恋を慰める会に代わってて



伊藤さんがどれだけ好きかって事をポツポツと話してる二階堂さんの話を聞きながらやっぱり伊藤さんて叶わないな、なんて思ってた。



しかも北山さんに譲る、みたいな話になってて。


やっぱり北山さんは伊藤さんなんじゃん！なんて心の中で敗北感一杯で凹みかけた時藤ヶ谷さんが一言




「オレもAに振られた。」



なんて言うもんだから二階堂さんと声を揃えてえ？！って。



今度はその経緯を淡々と話してる藤ヶ谷さんにだいぶ驚いた。




こんな完璧な人でも失恋するんだって。



しかも振られてもこんな風に私や二階堂さんにも隠さず告白してる藤ヶ谷さんに急に親近感が湧いた。






振られても完璧。
かっこいい、しかないんだけど。



失恋話しを聞きながら藤ヶ谷さんを見る私の目はどんどんハートになってったかもしれない。



三人でお酒を飲んで最後の方は暗い話を笑い話にして笑ってた。



きっと、そうやって二階堂さんの事元気付けようとしたのかな。



ほんとにすごい人だ。




⋯あ、伊藤さんに向けてた笑顔⋯



私にも見せてくれるんだ。




そう気付いた時にはもう恋に落ちてたんだ。






・

※→←相沢日奈子の恋。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す