君のその手に ーspin offー

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「きっぱりさっぱり、に見えます？」


「まあ、雰囲気な。本当のとこ、どうなの？」



計算高くて賢い相沢さんは。
なんて心の中で続きを言うオレは今相当参ってる。









北山に嫉妬してる。



Aが幸せならそれが何より、なんてカッコつけてても
違う男がそうさせてんだって現実を突きつけられると、そんな虚勢は見事に崩れ落ちた。



でも、オレ達の事気にすんな、今まで通りだろ？ってAさんに伝えなきゃって二階堂の言葉に押されて今日はわざわざ二人の邪魔しに行ったんだ。






いい加減、腹括らないと。かっこわりー。



「結構引きずりますよ？恋愛は。振られる事もあるし、傷付いてばっかりです。」



「そうなの？」



「しかも、私って、誰かを想ってる人ばっかり好きになるみたいで。」



「幸せになれねータイプじゃん。」



「どうもそうみたいです。」



なんて言ってふふって笑ってる。



「オレも、そーかなー。」



結局、ずっとAだったんだ。オレは。



結衣の事あんなに大事にしてたつもりでも
オレの事見向きもしてない元カノなんか好きになったおかげで、幸せが遠のいて⋯



「藤ヶ谷さんが言うと、それ嫌味に聞こえますね。」



「相沢も結構、嫌味に聞こえるぞ？」



男に苦労なんてしてなさそうだし。



「相沢はさ？自分の事可愛いーって鏡の前で笑顔なんか作っちゃうタイプだろ？」



オレの言葉になんですか、それ？って若干呆れてる。



「でもそれって藤ヶ谷さんは私の事可愛いーって思ってくれてるってことですか？」



「一般論だよ。」



「⋯答えになってませんけど。」



面白くなさそうにカクテルをゆっくり口に含むその姿は
妙に色気があって男受けすんだろな、なんて客観視する。



「なんで伊藤さんなんですかね？北山さんも、二階堂さんも。⋯藤ヶ谷さんも。」



「なんでだろな？Aは入社した時から皆のアイドルだよ。」



「⋯わかります。」



「相沢が同じフィールドに立つ必要ないんじゃない？おまえだって充分モテてんだろ？」



「別にモテてないですよ。この見た目が声掛けやすいからじゃないですか？」



⋯いいねぇ。



今日の相沢は何故かどこかやけっぱちで本心をズバズバと言ってくるから笑っちゃう。

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