君のその手に ーspin offー

相沢日奈子の恋。ー藤ヶ谷sideー ページ1

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「藤ヶ谷さんがまさか寝てる伊藤さんにキスするなんて⋯」



Aの家からの帰り道。



二人きりになった途端いきなり切り出してくる相沢。



「あんま蒸し返さないでくれる？」



オレの汚点。
でもあの場では悔しくて北山にほんとの事言ってやりたくなっちゃって。



幸せボケにも程があるだろ、あいつ。



本気でオレの事なんの牽制もしてない所も我慢出来なかった。




気抜くなよ？
Aの事泣かせたらいつだってオレが奪いに行くんだからな？っていう意味も含めて。




「⋯それだけ好きだったって事なんですね。」



「まあね。もう過去にしなきゃだな。」



目の前でプロポーズ紛いのとこ見ちゃったら
本気でもう忘れないとって。



あの時のAの信じられないってぼんやりした顔が目に焼き付いて「今日は飲みましょ？美味しいお酒飲めるお店、ありますから！」



いきなりオレの腕をとって足早に歩き出す相沢。



オレ、同情されてんのかな？






先週たまたま会社帰りに相沢と会って飲みに行った先には失恋した二階堂。



意気消沈の二階堂を慰めつつ、オレもAに告白して振られたってさらっと言うと二人に驚かれた。



二階堂だけ慰めるのは違うなって。
オレも全く同じ立場だしこうなりゃ一緒に傷の舐め合いでもして早く立ち直ろって思った。



その時の相沢はやっぱり伊藤さんって凄いですねって妙に感心してたけど、



そうだった。
相沢も北山が好きだったん⋯だよな？


今はどうかわかんねーけど、好きだった男がオレ達が好きな女の子と付き合ってるっていうなんとも言えない関係のオレ達三人でヤケ酒気味に飲んだのがついこの間だ。








「相沢は、もう北山じゃないの？」


何気なく聞いてみるとクスって笑ってる。



「いつの話しですか？それ。」



だって。
さすが女の子は切り替えが早いわ。



いや、そもそも北山の事本気だったかどうかも定かじゃねーもんな、こうなれば。




「いいよな、相沢みたいにきっぱりさっぱり恋愛してみたいもんだわ。」



若干嫌味。自分でも分かってるけど、相沢にはこれくらいじゃ響かねーだろ。



今日も男受けしそうなオフショルダーのニットに短めのスカート。体冷えるだろ、なんて逆に心配するし。

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