君のその手に

８ 北山side ページ8

「北山くん」



声を聞くだけで心臓が跳ね上がる
オレの大好きな人の声。



「⋯お疲れ様です。桐谷部長」



辺りに誰もいない事を確認しながらこっちへ来る。



フフって笑ってスーツの袖を掴んできた。







「今日行っていい？」


「もちろん。」





良かった、って上目遣いで見つめられて
このまま唇を奪いたくなる衝動にかられる。




なんでこんなにこの人の全てが欲しいんだろ⋯



麗香さんの存在そのものがオレの心と体を支配して
近くにいるだけで冷静ではいられなくなる。



そんなオレの気持ちとは裏腹にじゃ、後でね、ってあっさりオレの元を去ってく麗香さんに後ろ髪引かれながら自席につくと



もうさっきまでオレと話してた事なんて無かったように、涼しい顔で仕事してる。



瞬間その姿にすら見とれてしまうけど
ここは職場だ。



あの人はオレの上司。



気持ち切り替えて仕事に取りかかった。







・








「今日は遅くなっても平気なの。」





嬉しそうにオレの首に腕を回す麗香さんが愛しすぎて
壊れ物を扱うかのように優しく抱き締める。





「⋯そうなの？めっちゃ嬉しい。」




つい甘えるような事言っちゃう。



いいだろ？いっつも強がって麗香さんが帰り辛くないように努力してんだからさ。




抜けるほどの白い肌の麗香さんの顔を見つめてたら
吸い込まれるように唇を寄せてた。








・









・









「⋯今日泊まっちゃえよ。」



あーまた言っちゃう。
ずっと朝までいたいんだよ。



「そうしたいけど明日の服持ってきてないから。」



フフって笑いながらオレを見る目は優しいけど⋯



いつもオレだけだ。
麗香さんの時間を欲しがるのは。




「社内で噂よく聞くよ？宏光がカッコイイって女子社員が騒いでるの。」







⋯それで？






「モテるんだから私一人に絞らなくていいっていつも言ってるよね？」


「⋯オレが麗香さんとしか会ってないのが重いからそんな事言うの？」





オレが他の子抱く事でその重荷が軽くなるなら
別にオレは誰とだって寝るよ。



好きな人の負担になりたくない。



それだけだ。







・

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