君のその手に

４５ 二階堂side ページ45

わけわかんねー。



どうしてミツがいきなりAさんにキスしてたのか。


掴みかかるオレに殴れよ、と言わんばかりに何の抵抗も見せず開き直ってるミツの嘲笑うような顔。



⋯頭おかしくなったんじゃねーか？



ミツの事が理解不能でオレは訳がわからなかった。



そんなミツを怒るでもなく無表情なAさんが、キスなんかされてないって。



その一言でオレはミツなんかどうでもいいからAさんのこと何とかしなきゃって思った。



でもどう声かけていいかわかんないでいたら
あっさりガヤさんの胸の中で糸が切れたように号泣する姿に落胆したわ。




ちょっとは近付けた気がしてた。
昨日だって二人で同じベットで寝たろ？



気を許してくれてんだって嬉しかったのに
それは同時に男として見られてないだけ。



しかもなんの頼りにもなんない、ただの後輩でしかないオレはAさんに今何をしてあげられるんだろ。








・








本社に異動してきたAさんが
ミツの事が好きなのはすぐ気がついた。



あまりにも絵になるお似合いな二人をずっと見ては嫉妬してたんだ。



⋯それでもミツはAさんには見向きもしてない。




それならオレにもチャンスあんじゃねーかって
どんどんAさんを好きになってく気持ちが止めらんなくなって。



フラフラしてるミツに愛想つかしゃいいのにそれでもAさんはミツの事ばっかりだ。









「なんでだよ⋯」



どうしようもなく悔しくてビールを流し込んだ。




部屋に帰ったってミツがいる。


どうしてもミツと一緒の部屋で寝る気にはなれなかった。




もう一杯追加でビール頼もうとした時








「⋯おまえもここかよ」




今一番聞きたくない声が頭上で聞こえて
オレは条件反射で座ってるオレを見下ろすミツを睨みつけた。

４６ 二階堂side→←４４ 北山side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す