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「ねぇ?Aさんっ、こういう時は泣いたらいいんだよっ」
「泣けないよ。」
だって悲しくない。
虚しいだけだから。
「⋯なんでわざわざエレベーター使わずに階段で下りたんだろね。」
こうなったらそこを後悔するくらい。
エレベーター使ってたら
北山と桐谷部長の濃厚なキスシーンなんて見ずに済んだのに。
「⋯ほんとだよ。酔いも一気に覚めたわ。」
二人でホテルのロビーに向かうと何も知らない藤ヶ谷が立ってる。
「ほら。やっぱりどう考えてもエレベーターの方が早いに決まってんじゃん」
得意気に言ってる。
違うよ。あのまま何も無かったら私が一番にロビーに着いてるはずだったの。
一番にロビーに着いた人が今日の飲み代奢って貰えるんでしょ?
「二階堂にあんだけハンディ付けたのに何普通に二人で歩いて来てん⋯」
言い終わらないうちに私達の様子がおかしいことに気付いたみたい。
立ち尽くすニカちゃんと私を交互に見てるけど
何て言ったらいいかわかんないよ。
不意に藤ヶ谷が私を抱き締めて来た。
「⋯やっぱり一緒にエレベーター乗ってたら良かったな」
何年かぶりの藤ヶ谷の温もりや匂いが全然変わってなくて気付いたら涙が流れてた。
「たいすけっ⋯、」
太輔の名前を呼んでその胸に体を預けると
さっきまでの事が無かったことになるような気がして無意識にしがみついた。
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また三人で飲みに行くはずだったのに
私の涙が止まらなくて
いつまでもこんな所で泣いてらんないだろって藤ヶ谷が私の部屋まで送ってくれた。
「中、入っていい?」
「⋯大丈夫、」
「大丈夫、って時ほど大丈夫じゃないでしょ。Aは。」
そう言いながら結局私の部屋に入ってくる藤ヶ谷。
ニカちゃんの前では泣けなかった私に
ニカちゃんは藤ヶ谷といた方がいいって言ってそのまま一人で外へ出てって
その背中がなんだか淋しそうに見えて申し訳ない気持ちになった。
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Haru(プロフ) - にかみつばさん» 初めまして(^^)そんな風に言って頂けるとはっ。ありがとうございます!ニカ担さんですかね?これからニカちゃん出番たっぷりありますので楽しんで頂ければ嬉しいです♪ (2020年5月31日 20時) (レス) id: a682c15f64 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 初めまして。ストーリーに引き込まれるようにここまで一気に読ませて貰いました。本当に小説を読んでいるような気持ちになりました。 (2020年5月31日 1時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
Haru(プロフ) - パンダさん» な、なぬ?!(笑)鼻血ですか?だ、大丈夫ですかっ?恋愛マゾ。私もそうかもです(笑)これからこの溺れてるみっくんをどう陸地に上げるか今超悩み中で^^;しばらく溺れさせときますので今度はティッシュ必須で見てやってください(笑) (2018年9月5日 17時) (レス) id: 476aea9d9a (このIDを非表示/違反報告)
パンダ(プロフ) - Haruさん、ご報告です!無茶苦茶になってる北山くんに興奮したのか鼻血出ました(笑)恋愛マゾ気味の私は、イトちゃんの恋より北山くんの苦しさに共感してしまいます。女なのに…。深く溺れるみっくんたまらないですー (2018年9月5日 16時) (レス) id: a68f49692e (このIDを非表示/違反報告)
Haru(プロフ) - ノリコさん» イトちゃんの苦しさが堪んないですよね。北山くんも辛いです。イトちゃんも今は苦しいですがそのうち光が見えてきますので懲りずに読んで頂けたらと思います。終わりの方は苦しさだけじゃなく楽しい展開に出来るようにしたいと思ってます♪ありがとうございます! (2018年9月3日 0時) (レス) id: 476aea9d9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Haru | 作成日時:2018年8月15日 20時