君のその手に

３９ 北山side ページ39

ふわりと香る麗香さんの匂いがいつもと違う事にすぐ気が付いてそれだけで嫉妬心が湧き上がった。



昨日今日とずっと目で追うだけしか出来なかった存在が目の前にいるのに素直になれない。






「こんな所に二人でいたら怪しまれますよ？」





ここへ来て突き放す事しか言えないオレ。



なんだか悔しいんだよ。




オレなんて全く眼中にない様子で旦那と仲良くしてる麗香さんが。





「宏光⋯怒ってる。」


「怒ってなんかねーよ」




ほら。怒ってる、ってオレの腕を優しく掴む麗香さんの手に反応してそれだけで抱きしめたくなったけど





「離して。」




心にもない事を言うのは、麗香さんの言う通り。



怒ってるっていうよりは嫉妬丸出しで拗ねてるだけだけど。




そんな事きっと全てわかってる麗香さんに機嫌直して？なんて言われるけど⋯




なんだろ？
ほんとに今オレ、麗香さんに心開けない。



結局オレなんて麗香さんにとっちゃただの遊びで
オレばっか本気なのが悔しくて。





「⋯旦那に優しくしてもらえばいいじゃん。」





いつもは言わない
絶対言っちゃいけない言葉だってわかってんのに言っちゃう。




「⋯宏光だって相沢さんと仲良くしてるじゃない。⋯付き合う事にしたの？」



オレを食い入るように見つめる麗香さんの瞳が揺れてて



初めてその瞳から麗香さんが本気でオレに嫉妬してるんだ、って気付いたんだ。






「⋯オレが相沢と一緒にいるの、やだった？」


「⋯嫌だった」
言い終わらないうちに自分でもどうかしたんじゃないかってくらい衝動的に麗香さんにキスしてた。




すぐに麗香さんの手がオレの背中に直に入って来て
焦がれてた麗香さんの唇に酔いしれて止まんない。




もっと。もっと、、



マジで止まんなくて体勢を変えて麗香さんを壁際に押し付けた。






「はぁー、止めらんない。」





一旦顔を離して欲 情してる麗香さんの顔を見ると
それだけでもうオレのもんだ、って錯覚して充たされた。




もう一度唇を近付けた時「っ！宏光っ、」



小声で叫ばれて
とんとんと肩を叩かれた。



麗香さんの視線がオレの背中の向こうにある事に気付いて瞬間的に振り向くと






「きた⋯やま⋯？」








呆然と立ち尽くしてるイトがいた。

４０→←３８ 北山side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す