君のその手に

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「接待⋯旅行？」





昨日の終電帰りが体に堪えて
眠い目を擦りながら出勤して
朝一番に桐谷部長からよくわからない言葉を聞いてハテナマークの頭。




「そうなの。毎年この季節にメーカーさん達の集まりがあってね？海外行ったり避暑地に行ったりするんだけど、今年は沖縄らしいのよ。この課からは私と北山くんが参加なんだけど、女性が足りないって事で伊藤さん、お願い出来ない？」




⋯さすが本社。
接待で旅行まで行くんだ。



「⋯特に何をすれば？」


「普通に社外の方と交流持って旅行楽しんでくれればいいだけなの。だだ、男性が圧倒的に多いのよ。」




⋯つまりはホスト役ってとこか。




桐谷部長に最後の方は申し訳なさそうに行ける？なんて聞かれて断れるはずもない。





「⋯行かせて頂きます。」





私の返事に途端パァっと表情が明るくなって
ありがと！毎年誰か女性探すの大変なのよ、本社勤務の洗礼だと思って許してね？って⋯




こんな美人で出来る上司なのに
なんて腰が低い人なんだろう。


男女問わず皆がこの人に憧れて付いてくだけの事はある。



桐谷部長ともっとお話しもしてみたいし
旅行なんて、久しぶりだし楽しんで行こうかな。



⋯後は北山が来る訳ね。




昨日の事⋯やっぱ言いすぎたよね。
ちゃんと仲直りしなきゃ。







そこへ桐谷部長とニカちゃんが何やら言い合いしてる。





「僕も行かせて下さいっ！」


「⋯男性は北山くんが行くからもういいのよ？」


「いや、でも、僕北山さんから色々と接待のやり方とか教わりたいですしっ！いずれかは北山さんに代わってその旅行参加したいと思ってるんでっ！」





⋯へぇ。
ニカちゃんって色々考えてんだ。
えらいな。誰もが嫌がるはずのこの旅行買って出るとか。




桐谷部長もオッケー出したみたい。



よっしゃってガッツポーズしながらこっちへ来る。



「Aさんと沖縄なんて夢みたいっ。」



私の耳元にそう言い残して自席に付いてる。




・・・動機が不純っっ！！




向かいに座るニカちゃんを睨む私に肩を竦めてとぼけてる姿に呆れるのを通り越して少し笑ってしまった。



でもきっとそのうち北山のやってる事を引き継ぎたいのは本音だろうから。



ニカちゃんに接待、頑張ろうねって声を掛けたら満面の笑みではい！っていい返事が来た。

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