君のその手に

１５ 北山side ページ15

目の前で余裕な顔でオレに指図してくる藤ヶ谷が本気でむかつく。




「おまえに何がわかんだよ？」



自然と低い声が出る。



「⋯わかんねぇよ。おまえの事なんか。わかりたくもないし。」


「は？じゃあ口出してくんなっ「でも、あいつなら、Aならおまえの気持ちわかんじゃない？」







・・・は？







「オレはおまえとAが上手くいけばいいと思ってんだよねー」






急に緩く微笑んで煙を吐きながらタバコを揉み消してる。



ほら、元カノには幸せになってもらいたいからさっなんて言いながら。



藤ヶ谷の言いたい事がさっぱりわかんねぇし更に苛立ちが増す。







「ふざけんなっ。イトにオレの気持ちなんかわかってたまるか」


「⋯おまえの先輩だよ？Aは。」







⋯先輩？それって、、







「⋯相手いる人と付き合ってたって事か？」


「そ。将来有望な独身の彼氏が目の前にいるのにその彼氏に目もくれなくなって、いつの間にか不倫にどハマりしてたよ。」







遠い目でため息ともとれる息を吐く藤ヶ谷の表情からは何も読み取れない。








「将来有望な独身の彼って⋯」


「オレだよ。オレ。」







なんて事ないように親指で自分の胸をトントンしてる。




藤ヶ谷はイトが既婚者を好きになったから振られたってことか⋯？






「⋯おまえ、イトの事許せたんだ」







今の二人にわだかまりがあるようには見えない。






「許せたっていうか、その当時はめっちゃ腹立ってムカついてなんでだよ？ってAを問い詰めたりしたけど⋯」







ただの心変わりじゃない。







自分より結婚してる人を好きになったなんて
プライドの高い藤ヶ谷が傷付くのは当たり前だ。




でもそんな事があったなんて
おくびにも出さない清々しい顔の藤ヶ谷は
イトの事、完全に過去にして消化してる。






「今はいい同期だよ。で、大切な元カノ？だからAには幸せになってもらいたいの。」






まあ、北山ってのが納得いかないけど、
あいつが好きだっつってるからさあ、
なんて最後一言余計だっつの。

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