北山さんに恋する彼女達

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･･･でもAさんにとったら
オレなんて頼りない
ただの可愛い歳下の男ってだけの存在だったのかな。



そう思うと勝手だけど悔しくて。
オレは週末必ずAさんに溺れたし
夢中になったし付き合いたいって思った。


でももう会えないって言うオレの事なんて
もう何とも思わないのかよ？




･･･最後の最後までオレはAさんにとって
青臭いガキのまんまだったって事か。


オレと会わない事をあっさり受け入れたAさんにもうカッコつけようなんて思わなくなった。




「･･･オレの事、どれくらい好きだった？」



女々しいのはわかってる。
でもこれだけはどうしても聞いておきたかった。




途端戸惑いを見せたAさんの目を見逃す訳ない。



･･･バカな事聞いた。



「宏光、勘弁して？」



涙を流すまいと無表情で耐えてるAさんを堪らず抱きしめた。



「ごめんっ。ごめんっAさんっ。」



最後までガキでAさんの気持ちなんて一つも分かってなかったオレを許してくれなんて言わない。


「･･･バカだね、宏光は。」


涙声でオレの頭を撫でてくれるAさんの手のひらが好きだった。


唯一気を許せて
こんなオレを甘やかしてくれて
でもちゃんと男として立ててくれてた。


こんな居心地のいい女の人はいなかったよ。



でもAさんの涙は見ちゃいけない。


最後までオレの前でカッコいい強い自分でいようとしてるAさんの事、最後にオレが立ててやるんだ。




抱きしめてた腕を解いてオレはすかさず後ろを向いた。



「･･･じゃあね、Aさん。
今までありがとう。」



Aさんの泣いてる顔なんて見たら離れらんないのはオレか。


結局最後の最後まで甘えてさせてもらうよ。




「うん。私もありがと。元気でね。」



そうオレの後ろ姿に話しかけるAさんの声はもう涙に濡れてはなかった。


オレはそのまま振り向かず玄関に向かって
ドアを開けた。




バタンと、重い扉が閉まると同時に
オレ達は終わったんだ。



･･･オレとAさんの長いモラトリアムの時間。



後で思い返せば夢だったんじゃねえかな？って思いたくなる程甘い甘い時間だった。





Aさんの部屋から一歩踏み出せば、今からは現実だ。



よしっ。



涙が零れないように上を向いて長く息を吐いた。








取引先の仲村さん。
Fin

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