北山さんに恋する彼女達

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「ありがと。」


短くそれだけ言ってタバコ吸っていい？って。


どうぞって気の抜けた返事をしたら笑って火を付けた。


「･･･水上さんていくつ？」


あ、歳なんて聞いてセクハラか？なんて言ってるけど私の事少しでも興味持ってくれたら嬉しい。


「２５歳です。」


「･･･そっかあ。いいな。若いってさ。」


ゆっくり煙りを吐きながら天を仰ぐ北山さん。


何か考えてるみたい。
煙りを吐いてるのかため息をついてるのか


天を仰いだまま吸われる事の無いタバコの灰が北山さんの指先から足元に落ちてく。


憂いを帯びた北山さんの姿に何も言えない。
･･･何を考えるの？
誰を想ってる･･･？



「オレも水上さんみたいに真っ直ぐになりてぇな。」


「･･･なれない理由あるんですか？」


「理由なんかないんだろうけど･･･
結局カッコつけてるだけかも。」


「北山さんはカッコつけたって
カッコつけなくたって何だってカッコいいです･･･。」


初めて見る気弱な北山さんに元気になってもらいたいのに気の利いた事言えない。
なのに


「水上さん、ありがと。オレの事好きだなんて言って貰えたら元気出たわ。」


そんな事言ってくれる優しい北山さんに泣きたくなった。


「今度の休みデートして貰えませんか？」


そしたらまた困った顔になっちゃった。
･･･やっぱりどう頑張ってもダメなのかな。


「ほんとごめん。
水上さんの事、可愛いと思うし嬉しいよ。
でもオレ好きな人いるからさ。」


こんなおっちゃんに傷付けられたくないでしょ？って。



そんなはっきり言わなくてもいいのに･･･。


これっきりでまた
ただの受付け嬢と社員さんの関係になっちゃうのが寂しくて悲しくてやるせなかった。


今度は悲しくて涙が零れそうになるけどこれ以上北山さんを手こずらせる訳にいかない。
唇噛んで耐えてたら体が震えて来る。


ダメじゃん。
結局困らせちゃう。


少しでも気に留めて欲しくて告白したのに
こんな事ならしなきゃ良かったっ･･･


我慢出来なくて涙が零れそうになった瞬間ふわって抱きしめられた。


タバコの香りが濃厚になって
ほんとは苦手な香りのはずなのに
北山さんの香りと混ざってクラクラして軽くパニックになる。


･･･え？


どうして？


びっくりし過ぎて涙止まっちゃった。

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