折れた翼【ハイキュー!!】

＃２３ ページ23

「技術があって、やる気もありすぎるくらいあって、何より、周りを見る優れた目を持っているお前に、仲間のことが見えないはずがない！」


菅原さんからボールを受け取った影山は、焦った表情をしている


まぁどうせ、なんか上手いことって何だ、とか考えてるんだろ


「俺は！お前の運動神経が羨ましい！」


影山は後ろを振り返り、突然そんなことを口にした


「はぁ？」


「だから、宝の持ち腐れのお前が腹立たしい」


「はぁ！？」


「それなら！」


影山が日向を指差す


「お前の能力、俺が全部使ってみせる」


「何だ？」


田中さんが不思議そうな顔をする


「お前の一番のスピード、一番のジャンプで跳べ。ボールは俺が持っていく！」


「持っていくって何？どういうこと？」


日向は首を傾げた


「お前はただ、ブロックのいないとこに、マックスの速さと高さで跳ぶ。そんで全力スイングだ。俺のトスは見なくていい。ボールには合わせなくていい」


「はぁ！？ボール見なきゃ空振るじゃん！」


「かもな！」


「おい！」


何するつもりなの、あいつ


「でも、やってみたい！」


「・・・わかった」


影山のゆるぎない瞳を見て、日向は頷いた


「まだ何かやるつもりか？王様の自己中トスなんて、誰も打てないってば」


ネットの反対側で、月島がニヤニヤしながらそう言った


そばかす君、山口が月島に便乗する


「だよねぇ」


それからすぐ、影山達はポジションに戻り、試合が再開した


「ナイッサー、一本！」


澤村さんのサーブを田中さんが取り、日向はブロックのいないところへ走り、跳ぶ


――――ﾀﾞﾝｯ！


ボールは、相手コートに叩きつけられた


「うわ、ドンピシャ。化け物かよ」


しかも、目ぇ瞑ってただろ


見るなとは言われても、目瞑るバカがいるかよ


いや、バカなのか


「・・・手に、手に当たったぁ！！」


喜ぶ日向に、月島が呆れた表情を見せる


「おい・・・」


澤村さんが、信じられないといった顔をする


「今日向は、目ぇ瞑ってたぞ・・・！」


「「「ハァ！？」」」


それには、月島も田中さんも、影山すらも驚いていた


「あの、どういう・・・」


月島が澤村さんに問う


「ジャンプする瞬間から、スイングするまでの間、日向は目を瞑ってた。つまり影山が、ボールをまったく見ていない日向の手のひらに、ピンポイントにトスを上げたんだ！スイングの瞬間に合わせて、寸分の狂いもなく！」

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