119 ページ22
玄関の扉をくぐれば突如、視界はひっくりがえる。強い衝撃と、それによる痛みで声すら出なかった。
玄関ホールにある階段の手すりを手探りで掴んで、ゆっくりと立ち上がる。父は貼り付けたような笑みでこちらを見つめると、拍手をした。その行動が理解できずに首を傾げた時、新聞が床に叩きつけられる。
『……は、』
それは町内新聞だった。稲妻町で起こったイベントやニュースが載せられている。父が投げた号の見出しには『フットボールフロンティア〜地区大会〜雷門中イレブン優勝！』という文字が大きく書かれていた。
「本当におめでとう、A。」
ぐしゃり、革靴が新聞を踏みけた。
「凄いな、地区大会優勝なんて。」
ぐしゃり、その音がとてつもなく不愉快だ。
「今は全国大会らしいな。誇らしいと、そう思うか。」
ぐしゃり。
祝福されるべき勝利を称えるどころか、それを踏みにじる行為──耐えられなかった。
沸き上がるはこの感情は怒りか悲しさか、はたまた呆れか。自分らくしないほど心の中では取り乱して、その足元から取り上げなくてはと体が動いた。
歪み、破れ、汚れてしまった新聞を胸に抱えれば、父から貼り付いた笑みが消える。
「期待外れだ、何もかも。」
──我が子は
自由には鎖を、希望には罰を。
ああ、酷い
けれど、けれども、期待外れの僕はそれ以上に酷い
役目を果たさぬ道具は無価値、それは存在意義の死。
我が神に懺悔致します、
『……僕は
被造物は造物主を愛するという。それは、造物主が被造物をそのように作るため。
しかし、僕は
僕は既に、人形ではないのだ。
貴方の思い通りの人形から、自由を追う囚人へ。
あの日、
もう二度と戻れない、戻らない。
どうか忘れるな、貴方が棄てた全てを。
父さん。
「お前の自由は無い、良いな。」
『…………はい、当主様。』
もう、貴方は僕の
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 78人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鷹羽(プロフ) - コメントありがとうございます~!!!好きと仰っていただけて感激です^^ノロノロペースではありますが、更新させていただきます！ (2021年7月15日 18時) (
レス) id: 338e0ddf16 (このIDを非表示/違反報告)
名前はまだない - コメント失礼しますm(_ _)m 主人公の設定とかめちゃくちゃ好きです！！鷹羽さんのペースで頑張ってください！更新待ってます！ (2021年7月14日 19時) (レス) id: 567784a46c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鷹羽 | 作成日時：2021年3月30日 1時
